精神医療国賠訴訟、原告の請求棄却 東京地裁「制度の問題ではない」
精神科病院への入院期間が38年に及び、地域で生きる権利を奪われたのは精神医療の制度改革を怠った国の不作為が原因だとして、統合失調症の伊藤時男さん(73、群馬県)が3300万円の国家賠償を求めた裁判で、東京地裁(髙木勝己裁判長)は1日、原告の請求を棄却した。伊藤さんは控訴する方針だ。 伊藤さんは自分の意思に基づかない「医療保護入院」によって強制され、入院が長期化したと主張したが、判決は「強制だと認める証拠はない」と判断。国の不作為だとする主張は、その前提を欠いているとした。 その上で「入院が長期化した原因として、周期的に繰り返す症状や、家族が退院に消極的だった可能性が考えられる」とし、精神医療の制度の問題とは言えないと結論付けた。 違憲の判断は回避 伊藤さんは医療保護入院制度が適切な手続きを欠き、憲法が保障する人身の自由や人格権などを侵害しているとして違憲性を訴えたが、判決はその当否を判断しなかった。 判決後、会見した伊藤さんは「不当判決だ。いまだに苦しんでいる入院患者に合わせる顔がない。最高裁まで闘う」と述べ、伊藤さんの弁護団は「中身のない判決だ。法律の解釈論には触れずに逃げた」と批判した。 提訴は2020年9月30日。訴状などによると、伊藤さんは10代で統合失調症と診断され、1973年9月から福島県内の精神科病院に入院した。東日本大震災の影響で転院し、2012年10月、茨城県の病院を退院。現在は群馬県内のアパートで暮らしている。