アジア大会で韓国に敗れたU-21代表は本当に「誇りと哲学を放棄した」のか
一方、今大会は東京五輪へのシミュレーションという点でも大きな意味があった。 オリンピックにおける男子サッカーの登録人数は、わずか18人。ワールドカップが23人、今大会が20人ということを考えれば、いかに少ないかが分かる。 しかも、中2日というタイトな日程で試合が組まれ、メダルを獲得するには6試合を戦い抜かなければならない。ましてや開催されるのは真夏の東京である。「ここ(インドネシア)も暑いけど、東京のほうがもっと暑いと思う。東京五輪は本当に難しい大会になると思う」と森保監督も肝に銘じていた。 今大会も、グループステージとラウンド16の間が中4日だった以外は、中2日、中1日というタイトなスケジュールだった。 にもかかわらず、メンバーを大きく変更することなく決勝トーナメントを戦い抜いた。「結果にはこだわっているが、違う選択として、ちょっときつい状態でもプレーしてもらうことを考えている」と指揮官は語っていたが、選手たちにタフさを求めたのは、東京五輪を見据えたうえでのことだったはずだ。 そのための準備も入念だった。 選手一人ひとりの食事や睡眠をチェックし、データでコントロールしながらコンディションを調整。また、深部体温を下げるために氷水に手首までつけたり、選手一人ひとりの体重に応じて水分補給量を細かく設定したりするなど、暑熱対策も入念に行われた。GK小島亨介(早稲田大)が明かす。 「どれだけ水分を摂らないといけないのか目安の量がロッカーに貼ってあります。自分はもともと意識して水分を摂っていますが、目安量を提示してもらえるので、これだけ摂ればコンディションを維持できるというのが分かりやすい」 前述したように決勝トーナメントでメンバーを大きく変えずに戦い抜けたのは、リカバリーに成功し、データ上で選手のコンディションが大きく落ちていなかったからだろう。今大会の選手起用における成功体験は、東京五輪でも生かされるはずだ。 ただし、メンバーを固定せざるを得なかったのは、選手層の薄さの裏返しでもある。ゲームメイクできるボランチ、サイドをえぐれるウイングバックなどの発掘は急務だろう。今回未招集だったDF中山雄太(柏レイソル)、FW小川航基(ジュビロ磐田)だけでなく、A代表に選ばれたMF堂安律(FCフローニンゲン)、MF伊藤達哉(ハンブルガーSV)、DF冨安健洋(シント・トロイデン)らの海外組も招集されるに違いない。彼らと今大会を経験して成長した選手たちとの熾烈なポジション争いが楽しみだ。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)