J3で3年目・松本山雅の現状 PO圏内に肉薄…逆転J2昇格へ“命運を託された”3人のキーマン【コラム】
日本代表MFと親戚のキャプテンが感じる重責
流通経済大学から2022年に松本山雅入りした技巧派は日本代表ボランチ・守田英正(スポルティング・リスボン)の親戚で、大学の後輩でもある。プロ入りに際しては相談もしたという仲だ。その的確なアドバイスが奏功したのか、このクラブでプロ1年目から主軸と位置づけられる。名波監督からは寵愛を受け、大きく成長。霜田体制移行後はキャプテンも任された。だからこそ、本人も「何としても松本山雅をJ2に復帰させなければいけない」と重責を感じていたはずだ。 だが、2年連続で困難なシーズンを余儀なくされた。今季も佳境を迎えた9月29日の奈良クラブ戦からの終盤戦4試合で未勝利。菊井自身も負傷でこのうち2試合を欠場しており、「自分がチームを勝たせる」という思いは人一倍強かっただろう。 「今日みたいに相手に持たれる時間もあるだろうし、相手の時間もある中で、やっぱり我慢してゼロで抑えるってところと、少ないチャンスの中でものにするってところは、優勝した大宮がやったように僕らも見習わなきゃないけない。ここからは結果が全てだと思います」と本人も語気を強めたが、しぶとく泥臭く戦うという松本山雅の伝統を彼が率先して体現していくべき。残り4試合は背番号10の一挙手一投足次第と言っても過言ではないほど、この男の重要度は高いのだ。 その菊井を「山雅で一番うまい選手」と言い切り、YSCC戦の2点目をアシストした中村仁郎も2人目のキーマンと言っていい。ご存知の通り、ガンバ大阪のアカデミー出身で、年代別代表の常連だった彼は今夏、悲壮な覚悟を胸に、初めて大阪を離れる決断をしたのである。 「今季後半戦だけでゴール・アシスト合計で10を目指す。助っ人の自分が松本山雅の成績を引き上げないといけない」と8月の移籍当初に力を込めていた中村。その後、8月31日のFC岐阜戦で初先発を飾り、9月22日のカマタマーレ讃岐戦で初ゴールを奪ったが、目に見える数字はそれだけ。本人もこの試合では結果に飢えていたという。 「今日落としたらホンマに終わってたと思うし、今日勝ってまだまだ望みをつなげたと思う。チーム全体で諦めてる選手はおらんし、僕自身も個人の成績がチームに還元されると思っているので、結果にこだわっていきたいです」と中村は言う。1得点・1アシストという現状を残り4戦で引き上げ、チームを勝たせられる存在になろうと考えているのだ。 霜田監督が3バックを継続するのであれば、中村は今回のようにシャドウの一角でジョーカー起用される可能性が高そうだ。 「3-4-3のシャドウは昔やっていたので、やりやすいですし、自由に使えるエリアも広くなる。自分のプレースタイル的にもジョーカーとして使われても全然やれると思います」と本人も目を輝かせる。 もちろんスタメンも狙っていくというが、限られた時間で中村の持つアイディアや背後を突く動きを押し出していけば、相手にとってより脅威になれる。そういう意味でも中村には相手を一刺しする鋭さをより一層、研ぎ澄ませていってほしいものである。