「スイート・マイホーム」DVDジャケット

ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。 【動画】劇場公開時の「スイート・マイホーム」予告編 第63夜はSCANDAL RINAが、齊藤工の監督作「スイート・マイホーム」を紹介。憧れのマイホームを手に入れたはずの一家に恐怖が忍び寄るさまを描いた本作について、自身の子供時代の記憶を交えてつづってくれた。 文 / SCANDAL RINA（コラム）、田尻和花（作品紹介） ■ 子供の頃、本当に入りたくない部屋があったことを思い出した 人は見かけによらぬものだとか 人間関係が人生の豊かさに直結するだとか 誰もが聞き覚えのあるような教えが、どれだけ時代が移り変わっても消えないのは、人は懲りずに同じ間違いを繰り返して同じ壁にぶつかり続けてしまうものだからかもしれないなと思った。 身をもって体験しないと得られない教訓がこの世の中には溢れている。 絵に描いたような幸せな家族。 憧れのマイホームを購入するために、モデルハウスを見学しに行く。 地下室にはいくつもの部屋を一気に暖められる魔法のエアコンが付いていて、いつでも部屋の様子が確認できるモニターもしっかり完備。 安心安全で子育てするにも適したスタイリッシュなその家は、これから先の人生をよりキラキラしたものにしてくれるように思えた。 丁寧に説明してくれる担当者の言葉に、信頼感と期待は増して、話はトントン拍子に進んでいく。 マイホームを買う、そんな一世一代の買い物をするときに寄り添ってくれるプロには知らぬ間に心を許してしまうものだよなぁと思いながら、気が付けば画面の世界にグッとのめり込んでいた。 あっという間にマイホームでの暮らしが始まって、その途端にひとつまたひとつと気味の悪い問題が起こり始める。 魔法のエアコンが備わった地下室が象徴的に映されるのだけど、大人が入るにはギリギリくらいの小さな入り口と、右に曲がって先が見えない作りの階段。狭くて暗くて閉鎖された空間に入る想像をするだけで、急に不利になったみたいな感覚になる。穏やかな昼間でも、賑やかなホームパーティー中でも、なんだかそこだけ不穏な空気が漂っていて凄く嫌だった。 実際にもそういう“何か”を感じる場所はあって、大人になって無視することもできるようになったけれど、子供の頃住んでいた一軒家で本当に入りたくない部屋があったことを思い出した。 親に抱えられて真っ暗なその部屋に入って、「何も起こらないでしょ？」と言われたときに、「なんで何も感じないんだろう？」と思ったことを思い出した。...書いてて普通に怖くなってきたから話を戻したい。笑 どこかで何かがひっくり返されるのかもしれないな？なんてちょっと構えて見ていても、それを超える繊細で巧みな展開があって、とても楽しめたキャッチーな作品だった。 RINA ■ SCANDAL RINA 1991年8月21日生まれ、奈良県出身。2006年にHARUNA（Vo, G）、MAMI（G, Vo）、TOMOMI（B, Vo）と結成したガールズバンド・SCANDALでドラムとボーカルを担当。2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たし、翌2009年にシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞した。2019年にはSCANDALのプライベートレーベル・herを設立。「SCANDAL TOUR 2024 “LUMINOUS”」が4月2日から全国で順次催されるほか、5月開催の「森、道、市場2024」、6月開催の「FLOW THE FESTIVAL 2024」への出演も決まっている。 ■ 「スイート・マイホーム」（2023年製作） 長野県に住むスポーツインストラクター・清沢賢二は、妻と娘たちのために念願の一軒家を購入。“まほうの家”とうたう、その住宅の地下には家全体を暖める巨大な暖房設備がある。マイホームで幸せな新生活を始めた一家だったが、差出人不明の脅迫メールをはじめとする不可解な出来事から、恐怖にさいなまれていく。 齊藤工が監督を務め、窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、吉田健悟、磯村アメリ、松角洋平、岩谷健司、根岸季衣、窪塚洋介が出演した。 「スイート・マイホーム」Blu-ray / DVD 2024年4月25日発売 税込価格：Blu-ray豪華版 9900円 / DVD通常版 3960円 発売元：日活 販売元：ライツキューブ (c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子／講談社