ホリエモンも参入! ヴィトン出店、時給2千円…世界の富裕層が注目の「ニセコ」で起きていること
夕方は大渋滞…レストラン不足で夕食難民続出
ニセコはすっかり高級コンドミニアムの集積地となった感がある。だが田中さんによると、ニセコの宿泊施設はホスピタリティが十分とは言えないらしい。 「海外のリゾートにある一流ホテルには、きちんと教育されたスタッフがいます。ニセコにはパークハイアットもあればヒルトンもリッツカールトンもありますが、それらの5つ星ホテルも含め、人材不足で人手をかき集めているような状況なので、従業員への教育が行き届いていない。 リゾートに泊まり慣れた旅行客から、支払う金額に見合うだけのサービスの提供がなされていないと厳しい評価を受けるホテルもあるみたいです」 アメリカン・エキスプレスのトラベル・コンサルタントが、カード会員の旅行予約状況から導き出した’24年注目の旅行先10選に、ニセコはスイスの代表的な山岳リゾートのツェルマットなどと並んで選ばれている。旅慣れた外国人のニセコに対する注目度は、高いようではある。 「ニセコがブランド化されたことで、特にアジアの人々にとっては確かに、ニセコに来ることが一つのステータスになっていると思います。うちのショップでスキーとウエアをレンタルするお客さんもアジア系が増えていて、その多くがスキー初心者です。スキーウエアを着てスキーを持ってゲレンデに立ち、写真を撮って終わりという人も中にはいます。 欧米の高級スキーリゾートに世界中からVIPが集まるのは、それだけの理由があるからです。こんなことを言うと地元の人に怒られるかもしれませんが、ニセコは残念ながら、リゾートエリアとしてはまだ世界的レベルの質を備えていません」 その理由の一つに、田中さんは交通事情を挙げる。ウインターシーズン中は、ニセコひらふ地区周辺の主要道路が大渋滞するという。 「エリア内を回る無料循環バスが走っているんですが、公共交通が不十分なので旅行客の多くはレンタカーを利用します。そのため、夕方の4時から6時ぐらいの時間帯は渋滞がひどいんです。1.5キロの距離を移動するのに約30分かかります。 でも、レンタカーを借りるにしても台数が足りない。タクシーも、地元の車両と札幌などから派遣された車両を合わせて30台しか走っていません。あまりに不便なためか、外国人同士の白タクがあると聞いています」 足りていないのはレンタカーやタクシーだけではない。飲食店も不足している。 「今、ひらふ地区にある宿泊施設のベッド総数は約1万3000床です。このエリアの飲食店を網羅した『ワイン&ダイン』というガイドブックに載っている全店舗の座席数は、合計で約2500席。コンドミニアムのキッチンで作る宿泊客もいるでしょうけど、飲食店が絶対的に足りません。もう毎晩のように、夕食難民が発生しています」 ニセコの飲食店不足に商機を見出したのか、ひらふ地区には今冬、前年の2倍を超える約50台のキッチンカーが道内各地から集結し、土地所有者の許可を得て営業しているという。 「外国人が見様見真似で握る寿司を1貫1500円で販売したり、イクラ入りのおにぎりを1個2000円で売ったりするキッチンカーもあります。一方では、キッチンカーを出店する場所代を、1シーズン100万円と設定している事業者もいるという状況です。 そういえば、あの堀江貴文さんがプロデュースしたラーメン屋が昨年の大晦日、うちの隣にオープンしました。海上コンテナを改造した3坪ほどの店舗が軒を連ねるフードストリートの中にあり、味噌ラーメンが1杯2500円。なかなか強気の値段なんです」 キッチンカーが並ぶスキーリゾートは、おそらく世界のどこにもないだろう。 「飲食店はどこも混んでいて入れない。リゾート内の移動にも一苦労する。欧米のスキー客から『雪質は最高なんだけどね』と言われても仕方がないです」