住んでいるマンションでの“民泊利用者”による騒音問題 確認すべきは“適法”な民泊かどうか、管理会社は苦情に対応する義務がある【弁護士が解説】
賃貸マンションやアパートの一室、あるいは一戸建て住宅などを宿泊施設として提供する民泊。ホテルのように宿泊専用ではないこともあり、民泊利用者と近隣の住民との間で、トラブルを招きやすい。迷惑を受けた住民側からの要請で、民泊サービスをやめさせることはできるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 住んでいる賃貸マンションで、ここ数年、民泊をしている部屋があり、昼夜問わずマンションの入り口に人が集まり、うるさくて困っています。 管理会社には何度も苦情を言っていますが、見て見ぬふりをされ続けています。騒音がひどいときは警察に来てもらいますが、解決には至りません。民泊を禁止させるにはどうしたらよいのでしょうか。(東京都・68才・主婦) 【相談】 民泊は住宅に有料で人を宿泊させる事業で、住宅宿泊事業法の適用を受け、民泊事業を始めるには届出が必要です。 賃貸マンションの一部住戸が民泊になっているのは、(賃貸者募集中などで)人が居住していない部屋を民泊として利用しているものと思います。その場合、住宅宿泊事業者(民泊事業者)は国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者に管理業務を委託することが求められます。 そこでまず、あなたのマンション内の民泊が果たして適法に届けられた民泊施設であるかどうかを確認すべきです。正規の届出のある住宅の場合には、「住宅宿泊事業(民泊)」と表示した大きな標識が掲げられますし、施設名は役所で確認できます。もし無届出で民泊をすれば、旅館業法違反で処罰されます。
すでに苦情を申し出た先が単なるマンション管理会社でなく、標識に記載された住宅宿泊管理業者であるとすれば以下のとおりです。 まず、住宅宿泊事業者(大家)から委託された住宅宿泊管理業者は、宿泊者に対して、騒音防止、ゴミ処理、火災防止、その他生活環境悪化防止のために配慮すべき事項を説明する義務があります。宿泊者が外国人の場合には、外国語を用いてこれらの説明をしなければならないとされています。 さらに、管理業者は「届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問い合わせについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない」と定められており、苦情を受ければ応える義務があります。 管理業者が対応しない場合には、役所(原則は都道府県ですが、保健所を設置している場合は市町村)に相談するのがよいでしょう。知事や市長は、民泊事業の適正な運営を確保するために必要であると認めれば、民泊事業者や管理業者に対し、業務の方法の変更や運営の改善を命じることができます。従わなければ、民泊事業者の業務停止を命じたり、管理業者の登録取り消しを国交大臣に求めることも可能です。 さらに、賃貸借契約により、大家は賃借人に対して平穏な居住環境を提供すべき義務を負っています。そこで大家に対して善処を求めることもできます。 【プロフィール】 竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。 ※女性セブン2025年1月1日号