〈支持のうねり起こすハリス〉急速に集める「ブロック票」、“異例”の動きはどこまで続くか
突破口に欠けるトランプ
これに対し、トランプ共和党陣営は、ハリス氏が民主党候補として登場して以来、もっぱら対応に追われており、これまでのところ、反撃のための決定打を欠いたままだ。ハリス候補に対する小手先の個人的中傷・非難発言を繰り返すのみで、いまだに共和党寄りの有権者を納得させるだけの政策論争を仕掛けるには至っていない。 ハリス氏が義務教育の質的改善、女性の権利拡大などの取り組むべき課題にたびたび言及しているのとは対照的に、トランプ氏は「ウクライナ戦争、中東ガザ紛争は自分が直ちに終わらせる」といった荒唐無稽な発言以外は、過去の栄光を語るのみで、政権奪取後のビジョンについてはほとんど何も言及していない。 それどころか、トランプ氏は、黒人としてのハリス氏の生い立ちに疑問を投げかける発言で、黒人層の反発を買い、バンス副大統領候補も、出産経験のないハリス氏を「子なしの猫可愛がり女性」と評した過去の発言が暴露され、白人女性たちの批判を浴びるなど、このところ失点続きだ。 トランプ陣営によるハリス候補に対する反撃態勢が一貫性を欠いている点については、つい最近まで、選挙戦略そのものが「バイデン民主党候補との戦い」を前提に進められてきた点が挙げられている。 政治メディア「The Hill」の報道によると、同党の有力上院議員が7月下旬の共和党大会前に、副大統領候補の人選について、トランプ氏と電話で意見交換した際、バイデン氏が8月19日から始まる民主党大会を待たず撤退表明する可能性があるとして、もし、ハリス副大統領が代わって民主党候補に指名された場合の対応策を早急に検討するよう助言した。 しかし、トランプ氏は「バイデンがTV討論会で大失態を演じて以来、民主党が大混乱に陥ってはいるが、それでもバイデンは最後まで降りないだろう」との見通しを述べた上、これまで進めてきた選挙戦略への自信を表明した。 そして、副大統領候補については、トランプ氏に絶対忠誠を尽くし、同じ超保守思想を持つJ.D. バンス上院議員を抜擢する考えも伝えた。