なんと、マグマ活動の鍵を握るのは「マントルまで染み込んだ水」だった…沈み込み帯で起きている「驚きの現象」
加水×減圧=マグマの発生
蛇紋石の脱水反応は、一定の温度と圧力の条件がそろったときに起こりはじめます。したがって、同じ沈み込み帯であれば、この脱水反応が起こる深さは一定です。では、蛇紋石が沈み込み帯で吐き出す大量の水はどうなるでしょうか。 沈み込むプレートは表層の堆積物、玄武岩質の海洋地殻、その下のマントルからできています。堆積物の多くは海溝ではぎとられ、上盤側に付加されますが、一部は地殻・マントルとともに沈み込みます。マントルの蛇紋石から吐き出された水は、その上の海洋地殻と堆積物を通り抜けて、上盤側のプレートのマントル(マントルウェッジ)に加わります。 前回の記事で説明した加水融解を思い出せば、沈み込み帯の上盤側のマントルが、ある深さでマグマを生じやすくなっていることがわかるはずです。水が加わったマントルはソリダスが下がって、溶けやすくなるのでした。 さらに、海洋プレートの沈み込みに起因する、上盤側のマントルウェッジ内部での二次的な動きも重要な効果を果たします。マントルウェッジの下部では、その下の海洋プレートに引きずられ、下向きの流れが生まれます。反動として、マントルウェッジの中央部では上向きの流れ(とそのための減圧)が生じるのです。 こうして、マントルウェッジの中では加水と減圧が起こり、二重の効果で岩石の融解が起こりやすくなる(ソリダスが下がる)のです。 沈み込み帯に火山が形成される理由がわかってきました。 では、その火山が列をつくるのはなぜでしょうか? これについては、また別の機会に考えてみましょう。 ---------- 『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』 ----------
田村 芳彦(海洋研究開発機構(JAMSTEC))