なんと、マグマ活動の鍵を握るのは「マントルまで染み込んだ水」だった…沈み込み帯で起きている「驚きの現象」
地球の大陸は謎だらけ。 地球表面を構成する岩石は、海洋底と陸で明確に異なる。火星や金星の表面を覆う岩石は、地球の海洋底の岩石と同じ「玄武岩」。地球の陸地を構成する「安山岩」は、火星や金星には存在しない。ほかの惑星には存在しない安山岩に、地球表面の3割が覆われている。 【画像】地殻はマントルの上で「浮いて」いた…地球スケールで考えるアルキメデス原理 地球にはなぜ安山岩があるのか? 岩石学者の田村芳彦氏がその謎に挑んだ書籍『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』が講談社ブルーバックスから刊行された。刊行を記念して、本書の読みどころを厳選してお届けする。 ※本記事は、『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。 火山をつくるにはマグマが必要 地球には多くの火山があります。それらは、地下で生じたマグマが地表に噴出してつくったものです。 マグマとは、岩石が溶けてできる液体です。地下では、一定の条件が満たされたときに、岩石が溶けマグマが生じます。 前回の記事で説明したとおり、岩石を溶かす方法は大きく分けて3通り。加熱(高温のマグマと接触させること)、減圧(深いところから浅いところへ移動させること)、加水(岩石を構成する鉱物に水を加えること)です。 火山のある場所の地下では、これら3つのうちの少なくとも1つが満たされ、マグマが生じています。マグマの生じ方によって火山のタイプは異なり、そのために火山の分布にもちがいが生まれます。ぽつんと孤立した火山や、列をなす火山などのちがいは、もとをたどるとマグマの生じ方に差があるのです。
沈み込み帯の火山列
私たちの住む日本列島は多くの火山を有します。狭い国土の中に、111もの活火山(約1万年以内に噴火したことのある火山と、活発な噴気活動がみられる火山)があるのです(図2-13)。しかし、日本列島はホットスポットでも中央海嶺でもありません。 日本列島は、ユーラシア・北米・太平洋・フィリピン海の4枚のプレートがひしめき合う場所にあります。ユーラシア・北米の2枚は大陸プレートで、太平洋・フィリピン海の2枚は海洋プレートです。 日本列島の大部分はユーラシアプレートと北米プレートの上に乗っています。し たがって、太平洋プレートとフィリピン海プレートは列島の下に沈み込んでいるようなものです。そのため、日本列島の周辺には海溝(プレートの沈み込み口にできる、深い溝状の地形)が多く、日本は領海の面積のわりに深い海の体積が大きくなっています。