「コンテンツ界の大谷選手」生み出す環境を 経団連、アニメ等IP産業の成長戦略を提言「関連予算を2,000億円規模に」
日本経済団体連合会(経団連)は15日、エンターテインメント・コンテンツ産業の振興に向けた提言「Entertainment Contents ∞ 2024」を公表した。同提言では、アニメ、ドラマ、ゲーム等の日本のコンテンツ産業について、経済安全保障の強化や他産業への波及効果をもたらす基幹産業として位置付け、包括的な支援策の実施を求めている。 【画像】日本IPの拡大目指し「制作力強化」「海外展開」の重要性を強調【図】 団体はコンテンツ産業の規模と成長に注目しており、提言序文には日本発コンテンツの海外売上は2022年に4.7兆円規模に達し、世界的IPの累積収入ランキングでもトップ25の約半数を日本が占めるという、高い競争力に言及している。 特に、自由な創作表現可能とする環境下でのクリエイターの才能と努力、そして多様なファンの存在が、日本のコンテンツ産業の強みであると述べ、将来像として、2033年までに日本発コンテンツの海外市場規模を15~20兆円に拡大することを目標に掲げた(前回提言と同内容)。
IP創造を起点に好循環の確立を 生成AIにも言及
そして目標について、抽象的な例として「コンテンツ界の大谷翔平選手」のような世界的なトップの存在となるIPや人物の育成を挙げており、目標達成に向けて「クリエイターのIP創造を起点とした好循環の確立が重要」だと指摘。具体的には、制作力強化、海外展開、産業の持続的成長と収益拡大、クリエイターへの還元という循環を作り出すことが必要だとしている。 提言は数万文字にわたりすべてを紹介することはできないが、政府に対して「コンテンツ関連予算を2,000億円以上へと早期に拡大すべき」との内容を含む、「1.人材育成・確保」、「2.挑戦支援」、「3.デジタル・生成AI」、「4.海賊版対策・著作権保護」、「5.情報・インテリジェンス共有」、「6.ローカライズ」、「7.プロモーション」、「8.拠点・コミュニティ形成」、「9.経済圏拡大」を挙げた。 同時に各業界には解決すべき課題も山積していると指摘。例えばマンガ分野では海賊版被害が深刻で、官民での対策強化と海外向け正規版配信サービスの育成が急務と強調した。アニメ分野では、市場拡大と人手不足によりアニメーターの待遇改善は進みつつあるものの、なお課題が残る。ゲーム分野では、家庭用ゲームで競争力を維持する一方、PCゲームやモバイルゲームでは米中韓に出遅れている現状を指摘している。 そして近年注目を集める生成AI技術にも言及。提言では、生成AIを制作効率化や多言語展開のツールとして活用する可能性に期待を示す一方、著作権侵害や雇用喪失への懸念も表明。「AIによる止まることのない変化の波に対し、目を背けることなく向き合うことが重要」と指摘している。
編集部 経済・社会担当