二代目林家三平「父を知らない世代にも楽しんでもらえる」 展示品は約3000点 東京・鶯谷「ねぎし三平堂」が4年ぶりに再オープン
【渡邉寧久の得するエンタメ見聞録】 14日、新しいエンタメスポットがオープンする。東京・鶯谷の「ねぎし三平堂」だ。初代林家三平の資料館として平成7(1995)年11月にオープンしたが、コロナ禍で休館。展示品を入れ替えて、このたび、4年ぶりに再オープンにこぎつけた。 落語家として寄席の人気者であると同時に、テレビ・ラジオでも引っ張りだこだった昭和の大スター三平。上野鈴本演芸場で二つ目時代にトリ(主任)を務め、メディアでは「昭和の爆笑王」「神風タレント」と呼ばれ、昭和36(61)年の正月三が日には、テレビ・ラジオの出演本数が108本という忙しさを極め、NHK紅白歌合戦に応援ゲストとして出演するなど昭和の芸能史に強烈な記録を刻み、記憶を残した。 展示品は約3000点で、当時のテレビ・ラジオの台本(局にはないものも!)、ラジオの公開放送の後ろ幕、ネタのヒントを書きつづったメモ帳、落語協会が作っていた身分証明書など貴重な演芸資料と、メガネや表札、愛用のペンといった生活用具で構成されている。ものを大切にして捨てなかった初代の生活習慣が功を奏した形だ。 初代の次男で、堂長を務める落語家の二代目林家三平は「コロナで一度閉めたので、息を吹き込む作業が大変でした。レイアウトを変えて、父を知らない世代にも楽しんでもらえるようにしました」 入り口付近には営団地下鉄(現東京メトロ)のポスターがあり、キャッチコピーは初代のヒットギャグに似せ「すいません」。小さな文字で「混雑時のタバコはやめましょう」と書かれている。若い世代には信じられないだろうが、昭和52(77)年当時、地下鉄車内はタバコが吸えたことが分かる貴重な資料だ。 今年は、初代も所属した落語協会誕生100年で、来年は初代生誕100年になる。にぎやかに初代をしのぶ催しも考えられているそうで、三平は「来年に向けて頑張りますので、どうもすみません」と初代の人気ギャグで呼びかけた。 JR鶯谷北口から徒歩5分。開館は毎週水曜と日曜の週2回で午前11時~午後4時。入場料は1000円(小学生500円)。4月28日から5月6日までゴールデンウイークは休まず開館する。 (演芸評論家・エンタメライター)
■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。