「避難情報早くなった」、気象防災のスペシャリスト雇う自治体は効果実感も…活用全国に広がらず、なぜ?
気象災害が頻発する中、避難情報を出すのは身近な市区町村の役割だが、自治体は人事異動が頻繁で気象や防災の専門人材が育ちにくい状況にある。「専門家が自治体を支援できる体制が必要だ」との声が上がり、2017年度に運用が始まった。 市区町村などに任用されると、普段は自治体内での研修や住民への啓発活動を行う。災害時は自治体で気象状況の解説をしたり、首長に避難情報発表の判断を進言したりする。まさに、千葉県野田市の伊東さんのような働きが想定されているのだ。 アドバイザーになるために受ける気象庁の研修で学ぶことは「危険な地質の見つけ方」「災害対策本部における対応」など多岐にわたる。全国で委嘱されている気象防災アドバイザーは、今年4月時点で272人。それぞれの活動する地域で、きめ細やかな気象解説を担う「気象防災のスペシャリスト」となることが期待されている。 ▽自治体「避難情報の判断は難しい」でもアドバイザーは広がらず
内閣府は2021年度、123自治体を対象にアンケート調査を実施した。 避難情報の発表についての質問では、「土砂災害の危険度分布や河川の水位などが刻々と移り変わるため、判断が難しい」との回答が66%に上った。他に、判断が難しい理由として「内容が専門的」を挙げた回答も24%あった。 また、防災の知識を持つ職員が足りているかどうかという問いには85%が「いいえ」と答えた。 気象防災アドバイザーの潜在需要は高いはずだ。 ところが、活動は広がっていない。気象庁によると、アドバイザーを2023年度中に任用していたのは21都道府県の40団体にとどまっていた。 最も多かったのは愛知県で5団体。埼玉県が4団体、東京、千葉、島根の3都県が各3団体と続いた。常勤や週数回の非常勤など任用形態は団体によって異なる。 ▽理由を尋ねると なぜ専門人材に不足感があるのに任用が進んでいないのか。自治体に理由を尋ねてみると、こうした声が聞かれた。