岩手県立図書館で「啄木資料展」 家族にまつわるテーマ展示も
岩手県立図書館(盛岡市盛岡駅西通1)で現在、「第36回啄木資料展」が行われている。(盛岡経済新聞) 同館では、郷土を代表する作家として石川啄木と宮沢賢治についての資料を網羅的に収集し、新しい資料は隔年で開催する「啄木資料展」と「賢治資料展」でそれぞれ公開している。 今回の「啄木資料展」では前回の展示以降の2年間で収集した関連資料117点の中から、雑誌などを除く88点を展示。啄木の著書「雲は天才である」のほか、石川啄木記念館の官報、啄木が登場する小説、啄木に関する研究などが並ぶ。 新規資料の展示と併せて行っているテーマ展は「啄木と家族の道程」と題し、啄木と両親、妻、子どもとの関わりや、作品への影響などを紹介する。テーマ展は4章構成。1章では、父・一禎(いってい)と母・カツとの渋民との暮らし、妻となる堀合節子との出会い、故郷との別れまでを取り上げる。 2章では北海道での家族との暮らし、義弟・宮崎郁雨(いくう)の存在、1人で上京した啄木の挫折と家族との関係を紹介。本人による日記や北海道時代に勤めていた釧路新聞の複製、短歌を書き付けた肉筆ノートの複製などを展示する。 担当者の山本祥子さんは「上京して執筆した小説が評価されず、啄木は精神的に追い詰められるが、その生活の中で数多くの短歌が生み出されている。小説の中では描かなかった家庭や自分自身の苦悩が、短歌では率直に表現されているのが分かる」と話す。 3章では妻子の家出とそれによる作風への影響、4章では啄木の晩年と家族について取り上げる。「節子の家出については啄木自身が『打撃を受けた』と表現するほどだった。家族制度に反発していた啄木は、この打撃をきっかけに思想が変化し、作風も変化している」と山本さん。「啄木は人生の中で文学思想の変遷を体験していった人物でもある。作品の背景にある家族への思いや考え、啄木との関係性を知ってもらいたい」と話す。 開館時間は9時~20時。来年1月19日まで。期間中の休館日は11月29日、12月27日、29日~1月3日。
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