経営の神様が一発で見抜いた「絶対に勝負に負けるタイプ」の特徴
● トヨタのカンバン方式をパクればうまくいく? 従って、ルーセントの社員同士がしっかり連絡を取り合い、一緒に作業をすることがとても重要だった。ところが、チームがバラバラになったせいで連携が難しくなり、仕事が遅れたり、ミスが増えたりした。 結果、コストが増え、サービスの質も悪くなり、お客さんに迷惑をかけてしまった。どんなに良さそうな方法でも、それが自分たちの会社に合っていないと失敗することがあるということだ。 他の会社で成功した方法が、必ずしもすべての会社でうまくいくわけではない。成功するためには、自分たちの会社の状況やお客さんのニーズをしっかり考えたうえで、どの方法が本当に役に立つかを見極めることが大事である。 理論が進化する過程においても、柔軟性は非常に重要である。理論は多くの場合、成功事例に基づいて構築される。成功した企業の特徴や施策を観察し、それらを組み合わせて「これが成功の秘訣だ」と結論づけることが一般的だ。 だが、成功事例だけに基づいた理論は適用範囲が限定的になりがちであり、すべての状況で通用するとは限らない。失敗事例から学ぶことによって、理論はその限界を補い、より多くの状況に適応できるものへと改良される。 トヨタの生産方式に関する研究では、初期段階では単なる特徴の列挙にとどまっていた。初期の研究者たちは、トヨタの「ジャストインタイム」や「カンバン方式」といった表面的な仕組みに注目し、それらを取り入れることで他の企業も成功できると考えた。 が、こうした特徴をそのまま真似た企業の多くは、トヨタほどの成果を上げることができなかった。生産性向上の表面的な側面をなぞるだけで、根本的な因果メカニズムを十分に理解していなかったからである。 その後の詳細なフィールド研究によって、トヨタの成功を支える具体的なメカニズムが明らかにされた。研究では、単に目に見える特徴だけでなく、トヨタの現場で行われている「問題解決のプロセス」や「フィードバックの仕組み」といった本質的な部分に焦点が当てられた。