「ライオンの隠れ家」「宙わたる教室」そして…秋ドラマ【必見の3本】 絶対にラストまで見たくなるヒット作の“共通点”
「科学の前ではみんな平等」
「宙わたる教室」は元エリート惑星科学者の藤竹叶(窪田正孝)が「やりたい実験があるので」と言い、JAXA(宇宙航空研究開発機構)からの誘いを断り、東京の新宿にある高校の定時制の教師になる。ここで藤竹は科学部をつくった。 部員は21歳の元不良少年・柳田岳人(小林虎之介)、日本人とフィリピン人のハーフで義務教育を満足に受けられなかった40代の越川アンジェラ(ガウ)、体も精神面も脆弱で保健室登校を続けている16歳の名取佳純(伊東蒼)、集団就職で上京した70代の元町工場経営者・長嶺省造(イッセー尾形)。世間がエリートとは見ない4人である。 だが、4人は情熱とチームワーク、さらにアイデアと藤竹の適格なアドバイスによって、「火星のクレーターの再現」という画期的な研究を成し遂げた。感動的だった。出身校や通う学校の偏差値によって人間の価値まで決めてしまうような風潮が強まっているから、なおさらである。 これが藤竹の「やりたい実験」だったことが第9回で分かった。藤竹はエリートであろうが、なかろうが、「科学の前ではみな平等」と信じていた。それを証明したかったのである。 発端は藤竹が大学の助教をしていた当時の教授・石神怜生(高島礼子)が、研究を手伝ってくれていた高専生・金井悠(佐久本宝)の実験データを流用し、論文を書いたこと。論文に金井の名前はなかった。 石神は悪びれず、「高専の学生の名前を入れたら論文の格が下がる」と言い放った。藤竹は許せず、大学を去った。珍しいタイプではないが、石神は冷酷で人間を立場でしか見ない。 一方で藤竹は静かな男なのだが、内面が熱い。柳田を悪の道に引き戻そうとした不良と対峙した。ほかの3人や生徒のためにも労を惜しまなかった。観る側も熱くした。 次回は最終回。4人は研究成果を学界で発表する。また感動がもたらされそうだ。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。 デイリー新潮編集部
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