ホークス 日本一逃すも「残念じゃない!?」 未来の野球観戦スタイルを描く企画提案へ「思い込みを排除し、ビジネスの本質を見極めよう」と助言した元球団関係者の真意とは【第2期OTTO!学生スポーツゼミ⑨】
西スポWEB OTTO!の2024年度学生スポーツゼミ第9回講座は、福岡ソフトバンクホークスへの企画提案に向けた準備に入った。 ■ゼミを終えて「ホークスがビジネス的にも強いチームかと再確認できた」【一覧】 「10年後、20年後、30年後…ホークスの野球観戦はどんなものになっていてほしいか?」。長くホークスのブランディングやマーケティングを担当してきたゼミ長の市川圭之介・日本経済大教授が、球団から学生たちに課せられた課題を披露。学生ならではの独創的なアイデアを求めつつ、球団幹部に対する12月の提案に向け、企画書の書き方などを指南した。 ■「学生ならではの発想力を」 「これまで皆さんはスポーツビジネスについて多くのこと学び、毎回とても興味深いアイデアを出してくれている。来月、ホークスの責任者をゲストに招く。びっくりするような提案をしてほしい」。市川教授は冒頭、学生たちにこう呼びかけた。 市川教授は今回、企画提案の前提として企画立案に必要な段取りや企画書の書き方を指導した。 ・現状の課題を踏まえた目標を定め ・独自の発想に基づく企画案を練り ・理想の状況に向けて何を達成できるのか 市川教授はこうしたプロセスを経て企画案を練り上げるよう説明。 西スポ学生スポーツゼミの「強み」として ・学生ならではの発想力 ・OTTO!の強力なメディア力 ・(球団の)社員ではないという責任感の無さ を生かす意識を持つようアドバイスした。 その上で市川教授が注文したのは「ビジネス視点で本質はどこにあるのかを考え、思い込みを排除してほしい」という点だった。思い込みを排除し、本質を見極めるには何か必要なのか。市川教授はホークスが敗れた今年の日本シリーズを例えにした話を始めた。
ホークスV逸でも「売上げが立つ」その訳は
「福岡の皆さんは今年のようにホークスが日本シリーズで負けると『残念でしたね』と声をかけてくれる。なぜ?」 学生たちは市川さんの質問に以下のような回答をした。 「負けると(ファンは)残念だから」 「収益が落ちるから」 「日本一グッズ準備していたのに売れないから」 それを聞いた市川教授の答えは 「球団のビジネス視点でいえば、決して〝残念〟ではない」と意外なものだった。 「というのも日本シリーズの興業主はホークスではなく、日本野球機構(NPB)だから。NPBにしても残念ではない。NPBにすれば巨人、阪神、ソフトバンクのような人気球団が日本シリーズに出ただけでチケットが売れてプラス材料だし、DeNAも在京球団で悪くない。ゲームも6試合行われて客入りは上々だった」 ホークス球団サイドにしても「優勝グッズはリーグ優勝時に比べ、日本一グッズはそもそも売りにくい。日本一が決まった以降はファンが球場に足を運ぶ機会がなくなり、ネットでしか売れないから。選手やファンの視点ではなく、ビジネス視点でいうと売上げは立っている」 球団ビジネスの舞台裏の具体的なエピソードは興味深い。 市川教授の話を踏まえたグループワークでは、企画提案に向けて現場のホークスが抱える課題を思いつくまま付箋に書いて出し合う作業に取り組んだ。 「最寄りの地下鉄駅から球場までの距離が遠い。その道中にわくわくする仕掛けがほしい」 「グッズをもっと手軽な値段にできないか」 「育成選手が多く、若手の出場機会が少ないのはどうか」 学生たちがピックアップした課題は、12月に予定している球団へのプレゼンまでにどうブラッシュアップされた企画案に昇華するのか注目したい。
西日本新聞社