「海洋ごみを拾う」ためにスキューバダイビング!ロスカボス観光局長が語った、地域の意識の高さ
6月8日は国連が定める「世界海洋デー」。海の豊かさについて認識を新たにする日として2009年に設けられました。SDGsの14番目にも「海の豊かさを守ろう」という目標がありますが、逆にいえば、これらは「海の豊かさは年々、確実に失われつつある」ことを意味します。そこで、メキシコでサステナブルの最先進をいく地区、ロスカボスがいま、どのように海を守り、未来につなげようとしているのか、観光局長のロドリゴ・エスポンダさんに話を伺いました。
海洋ごみの約7割は、街で発生したものといわれる。街の路上に投げ捨てられたごみや、ごみ箱からハミ出したものが、雨とともに排水溝や川に流れ、やがて海にたどり着く。そのごみを口にした魚などが、めぐり巡って私たちの食卓に上る……。海のごみは、われわれの食に直結しているのだ。 海洋ごみを増やさないため、ロスカボスではどんな取り組みがおこなわれているのか。自身もダイバーであるロスカボス観光局のエスポンダ局長は言う。
「ロスカボスでは、25のビーチが国際環境認証『ブルーフラッグ』を獲得しています。これは北米大陸の地区としては最多。私自身もダイバーですが、それは海の美しさを楽しむより、海にあるごみを拾うのが大きな目的なのです。ビーチクリーンのためにダイビングをしていると言っていいですね」 ビーチクリーンのためにスキューバダイビングとは、そもそも日本人とは発想が違う。海の美しさを楽しむよりも、その美しさを維持するためにマリンアクティビティをおこなっているのだ。
「サステナブルな社会にゴールがあるわけではありません。常に進化させていくべきものなのです。ロスカボスは海と岩山があり、砂漠に囲まれた世界でも稀有な自然環境をもつエリアです。それゆえ、多くの住人はそれを意識し、みんなで守ろうという意欲が強い」(エスポンダさん、以下同)
ロスカボスはメキシコ随一のビーチリゾートではあるが、環境保全のために観光客数の爆発的な増加は目指していない。そのため、ロスカボス独自の政策として建物は6階建てまでとする高さ制限を設けており、他のリゾートにあるような大型ホテルは見当たらない。また、景観に配慮し、屋外広告物の設置もここでは禁じられている。 一方で、ロスカボスの基幹産業は観光であり、重要な経済活動であることは事実だ。そのため、エスポンダさんは観光局の役割を、「ロスカボスの地域住民が求めるものと、ロスカボスを訪れる観光客が求めるもののバランスを取りながら、観光振興を実現していくこと」と捉えており、同局は年に1回、観光政策と環境保全に関する地域住民の意識調査も実施している。 「いまあるものをいかに大切にできるか。自分が暮らす地域のアイデンティティを自覚し、自分はその地域の一部という認識があれば、きっとサステナブルな取り組みは、さまざまな形で成り立っていくと思います」 ロスカボス観光局 https://www.visitloscabos.travel/discover-los-cabos-for-japan/ text:仁田ときこ photo:かくたみほ