「ノーランディング」シナリオ復活、雇用統計堅調で景気過熱懸念
(ブルームバーグ): 米経済成長の継続とインフレ再燃で利下げ余地がほとんどないという「ノーランディング」シナリオはここ数カ月、債券市場の話題からほぼ消えていた。
それを復活させたのは、4日発表された雇用統計だった。
米雇用者数の伸び、9月は全予想上回る-失業率は4.1%に低下
非農業部門雇用者数は6カ月ぶりの大幅増となり、失業率は予想に反して低下。賃金上昇も示されたことで米国債利回りは急上昇。投資家は来月にも通常より大幅な0.5ポイントの利下げが実施されるとの見方を急速に撤回した。
米政策金利の動向に敏感な米短期債を買い上げることで、成長鈍化や緩やかなインフレ、積極的な利下げに備えていたトレーダーにとって、痛みを伴う再調整となった。それどころか雇用統計によって、景気過熱を巡る新たな懸念が再び浮上。2年債利回りを数年ぶりの低水準に押し下げていた米国債相場上昇を台無しにした。
DWSアメリカズの債券責任者、ジョージ・カトランボーン氏は、「金利低下の織り込みが後退することに伴うペイントレードは常に短期ゾーンの金利上昇だった」とした上で、「今後起こり得る状況は、米金融当局がもう利下げしないか、あるいは再び利上げせざるを得ない状況に追い込まれるかのどちらかだ」と語る。
最近では市場議論の中心は、経済がリセッション(景気後退)に陥ることなく減速する「ソフトランディング(軟着陸)」を達成できるか、それとも深刻な景気下降である「ハードランディング」に陥るかだった。金融当局は2年以上にわたるインフレとの闘いを経て、労働市場悪化の阻止に重点を移すことを示唆し、9月に0.5ポイントの大幅利下げに踏み切った。
だが、株価が過去最高値を記録し、経済が堅調に拡大し、インフレ率がなお当局の目標に戻っていない局面での利下げに違和感を抱く人にとって今回の雇用統計は追い風となった。つまり、ノーランディングのシナリオだ。
スタンレー・ドラッケンミラー氏やモハメド・エラリアン氏をはじめとする著名投資家やエコノミストからは、米金融当局は利下げに関する市場予想や自らの予測に縛られるべきではないとの指摘が相次いだ。エラリアン氏は「インフレは死んでいない」と警鐘を鳴らした。