吉岡里帆と荻上直子監督が堂本剛を語る「想像以上に純粋な人」
『かもめ食堂』『めがね』にはじまり、昨年世に放った『波紋』と、人気と評価を得続けている荻上直子監督。堂本剛へのあて書きからスタートした最新作『まる』でキャストのひとりに名を連ねる吉岡里帆とは、脚本を担当した2017年放送のドラマ作品で出会っていた。今度は監督とキャストとして、久しぶりに再会し、タッグを組んだ。そんなふたりが語る「THE CHANGE」とはーー。【第4回/全5回】 ■【画像】吉岡里帆 と荻上直子監督が登壇!堂本剛、綾野剛 、小林聡美 、森崎ウィン 、戸塚純貴と!映画「まる」公開記念舞台挨拶 ――監督、前作『波紋』は、新作『まる』とはまた全く雰囲気の違う作品でしたが、2作品ともに、円、丸を感じます。監督はもともと“まる”に惹かれるのでしょうか? 荻上監督(以下、荻上)「“まる”に関しては思いつきなんです。今回の作品は、主演の堂本剛さんにあて書きしました。堂本さん自身がアーティストでらっしゃるから、アート寄りの線上にいる現代アートの人にしようと思いました。そこから考えていって、一生懸命描いたものが評価されるのではなく、あれこれ考えずにペロっと描いたものがすごく評価されてしまう展開がいいなと。それでペロっと描けるものってなんだ?となったときに、“まる”かなと。そこから調べて行ったら円相とか、ありがたい形だということが分かってきて。だから後付けです」 ――堂本さん演じる主人公の沢田と同じアトリエで働く、後輩の矢島を吉岡さんが演じました。矢島も面白いキャラクターですね。 荻上「最初は新聞配達の人にしていたんです」 吉岡里帆(以下、吉岡)「え!全然違いますね」 荻上「苦学生みたいな感じで。ずっと前髪で目がかくれていて、ほとんど喋らないんだけど、急に思い切った行動に走って叫ぶ!みたいな、そういうギャップのある人がいたら楽しいなというところから考えていきました」
脚本を書く前に、彼のインタビューをすごくたくさん読んだ
――叫ばせたかったんですね。 荻上「ギャップのある人に叫ばせたかったんです」 吉岡「いろんな個性的なキャラクターが登場する作品で、沢田がいろんな人に出会って影響されていくんですけど、みんな芯が揺らいでなくって、鋭く影響を与えていくんです。ひとり揺れ動いて漂っている沢田を、“自分はこうなんだ、こう思っている”と芯のあるキャラクターたちが囲んでいる図に惹かれました。なかでも矢島に関しては、楽しくやらなきゃダメだなと。ちょっとずつ揺れ動いて核心に近づいていく沢田の目の前に、いきなり爆竹を投げたみたいな、お客さんが“いま、何が起こったの?”となるような人になればいいなと思っていました」 ――もともと堂本さんへのあて書きからスタートした作品とのことですが、どうやって揺れ動く沢田へと繋がっていったのでしょう。 荻上「脚本を書く前に、彼のインタビューをすごくたくさん読んだのですが、子どもの頃から仕事をされてきて、“子どものときは理不尽なことを言われても、子どもなんだから黙ってやれと言われ、大人になったら大人になったで、大人なんだから黙ってやれと言われた”みたいなことが書かれていました。そういうことが重なって、どうしていったらいいか分からなかったときに、音楽と出会って自分を取り戻すことができたと。そこから、“自分がわからなくなってしまう人の話”を書こうと思ったんです」 ――吉岡さん演じる矢島は、「沢田さんを見てると、なんか辛い」とぶつけますね。 吉岡「なぜオリジナリティで戦うべきアーティストが、言われるまま、自分の選んだ色でもない、選んだ構図でもないものを描き続けているのか。沢田さんと同じアトリエで働いている矢島は、自分らしく生きたいと、衣裳や見た目で“私はこうなんだ”と出しているけれど、実際は縛られて身動きができていない。そうしたことにすごくフラストレーションを感じている。でも沢田は、ルーティーンとして、言われるままになっていることを生活の中に入れてしまっている。その姿に、“自分もいつかそうなるんじゃないか。沢田さんのように、ロボットのように絵を描いてしまうんじゃないか”と」 ――でも、そんなフラストレーションをぶつけたときの沢田の反応は。 吉岡「“え?”と。“俺ってそう見えてるんだ”という感じで。彼自身は気づいていない。そこが面白くて、好きなシーンでした」 望月ふみ
望月ふみ