イモトアヤコ「芸人が内省的なことを書くのは恥ずかしいと思っていた」自分のメディアを運営して生まれた変化【前編】
21歳で世界中を飛び回り、数々のハードなミッションをクリアしてきたイモトアヤコさん。大好きな旅をすることができなかったコロナ禍の2021年には自身のウェブメディアを立ち上げ、“ていねいな暮らし”を追求。環境が変わっても、飽くなき好奇心と行動力で人生の楽しみ方を示してくれる存在です。 【写真】コロナ禍でウェブメディア運営を始めたイモトアヤコ「こんな部分もあるんだよ」 12月7日に発売されたばかりのエッセイ集『よかん日和』は、そんなイモトさんの頭の中を覗ける一冊。インタビュー前編は、エッセイを描くことで得られた刺激や文章に対するこだわりについて語ってもらいました。 イモトアヤコ 1986年1月12日生まれ、鳥取県出身。2007年から日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」でセーラー服を着てコモドドラゴンと競争する姿でお茶の間に大きな衝撃を与えた。TBSラジオ「イモトアヤコのすっぴんしゃん」ではパーソナリティを務める。2021年、ウェブマガジン「よかん日和」を立ち上げる。現在はドラマ、舞台など俳優業にも活躍の場を広げる。著書に 『棚からつぶ貝』(文春文庫)などがある。
ステイホームでワクワクやドキドキが得られないなら自分で作るしかない
――新刊の書籍『よかん日和』は、2021年にイモトさんが立ち上げた同名のウェブマガジン「よかん日和」で書き溜められたエッセイがまとまった1冊です。そもそもコロナ禍で自分のメディアを作りたいと思った背景を教えてください。 イモトアヤコさん(以下、イモト):21歳から番組のロケで世界を飛び回り、コンビニ感覚でアマゾンに行っていた私にとって、やっぱりステイホーム生活はすごく窮屈であり、退屈でした。だから心の栄養が足りていないような状態が続いていたのですが、気持ちを切り替えて、ワクワクやドキドキが得られないなら、自分で作るしかないと思ったんです。それこそキッチン用品を買い替えるだけでも少しワクワクするし、楽しい日々が始まるような予感がする。自分次第で、いくらでも日常の中にワクワクやドキドキが転がっていることに気がついて。そういった私なりの試行錯誤を発信する場所としてウェブマガジン「よかん日和」を作りました。 ――もともとイモトさんはSNSやブログを活用されていましたが、より自由に発信できる場所が欲しかったのでしょうか? イモト:そうですね。今もインスタやXをやっていますが、それぞれ投稿の内容やサイズ感に独自のカラーがあるじゃないですか。テレビの仕事も同じですが、その媒体に合った自分を出していくような側面があるんですよね。だから自分のメディアを作れば、何も気にせず等身大の自分を発信できると思ったんです。とはいえ、これまで私はずっとオファーに応えるカタチで仕事をしてきたので、ゼロからメディアを作る作業は想像以上に大変で。その苦労を味わったおかげで、一緒に仕事をしてきた人たちの凄さを再確認しましたね。 ――それこそテレビディレクターの旦那さんはゼロから企画を考える人ですよね。 イモト:そうそう。「あの人、やっぱりスゲェんだな」って思いました(笑)。自分がモノづくりに没頭して、その大変さを知ると、身近で頑張っている人や苦労して作られたモノに対する尊敬や感謝の気持ちが増すんです。 ――イモトさんは2022年の1月に出産を発表されましたが、子育てをしながらエッセイを書き続けることも大変だったのでは? イモト:2020年にもエッセイ集の『棚からつぶ貝』を出させてもらって、文章を書くことには慣れていたはずなのですが、今回は子どもを寝かしつけた後にもうろうとしながら書いたエピソードも……(笑)。今は保育園に預けることができるので仕事に集中できる時間が増えたのですが、最初は大変でしたね。ただ、自分が考えていることを文章で吐き出すと脳内が整理されて、スッキリしてストレスが緩和することもあるんですよ。そして、もともと私はエッセイを読むことが好きなんです。最初はさくらももこさんの『もものかんづめ』や『たいのおかしら』にハマったのですが、エッセイって著者の生活を覗き見しているような感覚になれるし、そこに親近感を覚えることもあれば、思いがけず生き方のヒントももらえることもあるじゃないですか。
<新刊紹介> 撮影/柏原力 取材・文/浅原聡 構成/坂口彩
イモト アヤコ