現代の子が抱える「はずせない」という不安。精神科医が語る、子どもの話を聞くときに「いいアドバイスをする」より大切なこと
子どもの話を聞くときに「いいアドバイスをする」より大切なこと
―『群青のカルテ』では、主人公が高校生の娘の声に耳を傾けてこなかったのではないか、とあれこれ振り返る場面がありました。 “親と子”という関係だからこそ、ちゃんと話を聞いてあげられなかったり、つい命令口調になったりという悩みを抱えている親御さんもいると思います。 尾林先生:親として子どもの話を聞く立場になると「傾聴スキルを駆使しなくちゃ」「子どもためになることを言わなきゃ」と気負ってしまうことがあるかもしれません。でも、子どもが親に求めていることは、その時々で違うと思います。ただ純粋に聞いてほしい、答えがほしい、手本を示してほしい、自分の考えを「そうだね」って追認してほしい……などなど。 常に正解を出してあげなければいけないと思ってしまうと親も子も息苦しいし、逆に「あなたが自由に決めなさい」と言っても、社会に決めた枠組みを意識して自力で意思決定をするのは難しいかもしれない。細かく教えすぎても煙たがられるかもしれない。そのさじ加減は、試行錯誤でいいと思うんです。 もし、そのさじ加減を「はずした」と感じても、軌道修正しながらやっていけばいいんだと思います。親だから、うまくできるなんて、そんなことはありません。 だから、子どもが何かを話してきたとき、方向性や答えのようなものを示してほしいのか、「自分はこうするよ」と言いに来たのかなど、子どもの意図の大きな見極めをできていればいいのだと思います。 ―子どもとの接し方で失敗した、いいことを言えなかったと思い悩む日があっても、その後も続く日常の中で少しずつ軌道修正していけばいいんですね。そう思えていたら、親の気持ちが少し軽くなりそうです。本日はありがとうございました。
【取材協力】
尾林誉史 先生 精神科医・産業医。「VISION PARTNERメンタルクリニック四谷」院長
【作品情報】
『群青のカルテ』(小学館)1巻発売中、2巻は5/24発売予定! 著者/椎名チカ 「辛い」「苦しい」「もう死にたい」 うつ病・パニック障害・依存症 死んでしまいたいと願うほどの生きづらさを抱える全ての人のために、 今日も精神科医・凛子は奔走する。 そんな中、大事な一人娘が自殺を図り!?
北川和子