島しょ部攻撃を想定、富士総合火力演習を公開
静岡県の東富士演習場で23日、陸上自衛隊の実弾演習「富士総合火力演習」が一般公開され、約29倍の抽選に当せんした一般客や招待客らが実弾による砲撃の迫力を観覧しました。
富士総合火力演習は、本来は富士学校の生徒に火力戦闘様相を認識させることが主目的の演習です。展示演習は一般公開日以外にも例年1週間ほど設定されており、自衛隊の各種学校生徒や関係者などが招待されます。 1961年に始まり、1966年に一般公開が開始された同演習は、近年では自衛隊の東日本大震災での活躍の影響でその知名度や人気は年々高まっています。また、同盟国や周辺国の武官も招待され、日本の防衛力を海外へアピールする場としての役割も担っています。
演習の内容は?
総合火力演習は前段と後段の二部に分かれており、前段演習は主に各種装備品の紹介とデモンストレーションを行い、後段演習では今日の情勢に基づいたシナリオに沿った演習が行われます。 前段演習では、りゅう弾砲や迫撃砲、各種小銃や誘導弾などの各種装備の射撃が行われ、それぞれ演習場の約600m~3000m先に設置された目標地域へ正確に弾着させる技術が披露されました。演習の目玉ともいえる「戦車火力」の展示では74式戦車と90式戦車による戦車砲の射撃が行われました。 後段演習は「島嶼部に対する攻撃への対応」がテーマとなっており、島嶼に敵が侵攻してきた際の陸上・海上・航空自衛隊による統合作戦を想定。会場上空に飛来したF-2戦闘機による対地攻撃のほか、偵察から部隊の展開、奪回のための攻撃までの一連の流れを、演習に参加している陸上自衛隊の装備品を使って再現していました。 前日の予行で砲弾の部品の破片が飛散し、観客を負傷させる事故を起こした10式戦車は、前段演習には登場しなかったものの、後段演習では空砲での射撃となりました。
オスプレイも飛来
今年の総火演では演習の際に、2018年までに17機を導入する予定のティルトローター輸送機「オスプレイ」の導入について、大型ビジョンの映像で念入りにアピールしていましたが、23日の演習終了後には、実際にアメリカ海兵隊所属のオスプレイが固定翼機モードで演習場上空を飛行しました。 アメリカ海兵隊のオスプレイは21日から29日の間に東富士演習場と北富士演習場で離発着訓練が行われており、場内アナウンスによると、今回の飛来は「米軍の離発着訓練の一環として飛行するもの」としています。 飛来した同機に対し、観客はその静粛性に驚いた様子でした。 後段演習の終盤には、10式戦車から履帯が外れて動けなくなるトラブルが発生。演習終了後には故障した戦車を牽引して回収する「90式戦車回収車」が登場し、珍しい姿を一目見ようと多くの観客が会場へ残り、回収作業を見守っていました。