「紅麹被害」で揺らぐ食品の安全 『GMP認証』サプリ製造工場には義務化・原材料工場は見送り 自主的に導入し安全対策徹底する工場も
小林製薬の紅麹サプリをめぐる問題が発覚してから3カ月。政府が打ち出した再発防止策は、健康食品の安全をどう変えていくのか。政府の対策を先取りする企業を取材した。 【画像】「紅麹被害」で揺らぐ食品の安全 小林製薬の問題を調査する研究所が公開した1枚のカビの写真。紅麹原料を作る工場から見つかった青カビを培養したものだ。この青カビが工場内の培養室や天井など6カ所から確認された。 紅麹サプリを摂取した人が腎障害などを訴えているこの問題。入院した人は280人を超えている。(※6月19日時点) 厚労省は5月末、見つかった青カビからプベルル酸と呼ばれる物質を確認し、動物実験の結果プベルル酸によって腎障害が引き起こされたと発表した。
■カビなどの繁殖を完全に防ぐことには限界がある
食べ物に生えるだけでなく、チーズの製造にも使われるなど身近なところにもいる青カビ。 菌に詳しい専門家は、「今回見つかったのは『ペニシリウム・アダメチオイデス』という、比較的珍しいカビだ」という。 近畿大学農学部 白坂憲章教授:普段から目にするような名前ではなくて。(文献によると)住環境にちょくちょく出てくるんですよね。ただ細かいところまで知られていなくて。(Q食品作る工場で頻繁に出てくるカビ?)ではないですね。頻繁に出るものではないと思います。 清潔なイメージがある工場でも、カビなどの菌の繁殖を完全に防ぐことには限界があると指摘する。 近畿大学農学部 白坂憲章教授:食品工場は必ず落下菌の調査をしていますが、かなりクリーンな状態になっていても細菌もカビも出ます。何が入ってくるか分からない。それらを取ろうとすると結構大変で…。 どうすれば製造過程での安全は守られるのか。
■「GMP」認証制度 記録・衛生管理・品質管理がポイント
政府がいま進めようとしている第三者認証制度「GMP」を先取りして導入し、安全と向き合う工場がある。 製造担当者:原料になります。こちらを大きな袋に詰めてタンクの上から投入して混ぜる工程になります。 この工場では、目に良いとされるビルベリーという原材料を作る工場。GMPという製造・品質管理に関する認証制度を5年前から取り入れている。 ・GMPポイント1 記録に残す GMPで求められているのは、すべての工程での作業を記録に残すこと。この工場では、作業内容や時間、担当者を全て記録し、約5年間保存している。 製造担当者:何か異常があった時に(記録を)見返すことができます。何時にどこの機械で、何が起きたのか見返すことができます。 ・GMPポイント2 衛生管理 さらには、衛生管理も重要なポイント。トレーなどの器具もすみずみまで拭き取り、菌が繁殖していないか厳しく管理している。 小林製薬の原材料工場では、培養タンクや器具から青カビが確認されていて、設備をきれいに保つことが改めて重要視されている。 ・GMPポイント3 品質管理 そして製造工程で何度も行われていたのは、サンプリング。 製造担当者:しっかりアントシアニンが抽出されているか、サンプリングをして確認します。 抽出された原材料はすぐに分析室へ。 分析担当者:抽出液の測定結果です。いつも通り、決められた範囲内の数値かどうかをクロマトグラフで確認します。 基準のデータとなっているピンクの波形と、製造した原材料の黒の波形が一致しているので、品質に問題ないことが確認できた。 分析担当者:異常が確認されたら次の工程に行かないように、誤って製品化されないように管理をする。 この工場では、GMPの基準を守ることで、いつ、どの担当者が製造しても同じ品質に保てるようにしている。 完成した製品の検査だけでなく、全ての製造工程でGMPを満たす必要性を感じている。 製造担当者:製剤メーカーが安心して使ってもらえる保証のついた製品を出すことができる。最後の検査項目だけで分かることもありますが、そうじゃないところもあるので、全ての工程が決められたプロセスで作られて同じ品質になるので、最後だけでなく途中のチェックも必要だと思っています。