吉田鋼太郎、シェイクスピアの名優が、乙女チックな“おっさん”を演じたら?
女好きだがまったくモテない33歳のおっさん・春田創一(田中圭)が、なぜか55歳のおっさん上司・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、同居しているイケメンでドSな後輩・牧凌太(林遣都)から愛を告白されてしまう。21日スタートした『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、土曜よる11時15分)は、2016年の年末深夜に単発で放送されて人気を博した、抱腹絶倒の“ピュアなおっさん同士のラブコメ”の連ドラ版だ。田中と吉田が同じ役で出演するほか、林、内田理央、眞島秀和、大塚寧々ら新キャストが加わってパワーアップ。第1話から、吉田の、夢見る乙女チックな演技がまぶしい。
シェイクスピアなどを演じる実力派舞台俳優が、乙女チックなおっさん役?
「天空不動産」の敏腕部長・黒澤(吉田)は仕事一筋で男気にあふれ、30年連れ添った妻(大塚)もいる理想の上司だが、実はゲイで、ピュアな乙女心の持ち主。なんと33歳の部下、春田に恋をしている。 吉田は役者としてのキャリアの初期から、シェイクスピアをはじめとする海外古典作品をこなせる実力派の舞台俳優として活躍し、蜷川幸雄作品の常連でもあった。 筆者が2年ほど前に吉田を取材した際、子ども時代はいつもテレビにかじりつき『キイハンター』や『ザ・ガードマン』、『2丁目3番地』、あるいは『太陽にほえろ!』などを楽しみに観ていた普通の少年だったそうだ。高校2年の夏に先生からシェイクスピアの舞台チケットをもらい、予習で本を読んだときは面白くなかったという。 「比喩も多いし、セリフもよくわからない。暗澹たる気持ちで舞台を観に行ったら、もうびっくりしまして。本に書かれていたあの場面が、こんなふうに立体化されるんだと。本とはまったく別物だったんですよ。お芝居ってこういうことなんだ、と。人間がそこに介在すると、とてつもないものになるんだな、と」 がぜん芝居への興味が高まり、上智大学へ進学後、シェイクスピア研究会に所属して「十二夜」で初舞台を踏んだのだとか。吉田は文学部ドイツ文学科だったが、英文科の教授でシェイクスピアの世界的権威であるピーター・ミルワード氏(2017年8月没)とも親しく、何度か同研究会の舞台も観にきてくれたそうだ。たまたま筆者もミルワード氏には懇意にしていただいた想い出があったので、楽しく話が盛り上がったのを覚えている。 そんなふうにシェイクスピアに鍛えられた、生粋の実力派の舞台俳優からキャリアをスタートした吉田が、あろうことか歳下の若い同性の部下に“乙女心”をキュンキュンさせるのだ。面白くないはずがない。