スズメからの警告(11月12日)
チュンチュンチュン。スズメは明け方、太陽の光を浴びて鳴く。気象予報のなかった昔、さえずりは、その日が好天だと知らせてくれた▼縁起物でもある。羽に空気を含ませ、膨らんだ様子を「福来雀[ふくらすずめ]」と呼ぶ。福を招く鳥として、さまざまな物語に登場した。民話「スズメの報恩」が川俣町に伝わる。2人のおばあさんの振る舞いが語られる。情け深い方は子スズメを助け、コメやお金の返礼を受ける。欲の深い方は無理やり世話をして褒美を期待するが、痛い目に遭う。子どもに因果応報を教える▼そんな身近な存在が姿を消している。環境省によると、年間3・6%のペースという。2016(平成28)年から5年の間に、全国で1万羽少なくなったとの調査結果もある。いずれ、絶滅危惧種になると説く専門家もいる。温暖化や農薬の散布による餌不足などが背景にあるらしい▼雑食ゆえに穀物への食害をもたらすが、害虫も食べてくれる。功罪あっても、人間の都合でスズメの生を狂わせてはなるまい。強欲の戒めは、民話の世界だけではない。環境への思いやりを忘れた社会は、必ずしっぺ返しを食らう。チュンチュンチュンは未来への警告とも受け止めねば。<2024・11・12>