<頂点へ・センバツ山梨学院>軌跡/下 夏の敗戦、糧に成長 録画見返し課題分析、攻撃に磨き /山梨
夏の県大会準決勝で富士学苑に敗退し、榎谷(2年)らは「甲子園に行くために山梨学院に来たのに、なんのためにここにいるんだ」とまで落ち込んだ。敗戦の雰囲気を引きずる中、新チーム発足後、最初の練習で吉田健人部長が「富士学苑の試合を忘れるな」と活を入れた。 苦い経験を生かすため、ナインは練習後に寮で何度も富士学苑との試合の録画を見返した。走るべきでない場面で焦って飛び出してアウトになり、重要な場面で一打が出ないなどの課題を改めて分析し、対策に取り組んだ。父である吉田洸二監督と球児たちを指導する吉田部長には「走塁のタイミングや打つ球の見極めを誤ることが、試合の流れを悪くさせる」ことを選手たちに認識させる狙いがあった。 新チームの始動後、走塁では、相手投手の挙動を見て動作を予測し、隙(すき)を見つけて走ることを心掛けるようになった。新チームトップの盗塁数を誇る鈴木斗偉(2年)は「盗塁は、投手の軸足やカウントを見て確実な状況になったら仕掛けている」と話す。 打撃では、配球を予測することや選球を意識した。「低めは打たない」というチームの方針を徹底し、低めの球を出すよう設定したマシンで打撃練習をして球の感覚を体に覚えさせた。相沢(2年)は「低い球を見極められるようになり、ボール球を振ってしまうことが少なくなった」と話す。 迎えた秋季県大会では、準決勝まですべてコールド勝ちし、決勝でも6点差をつけて圧勝。関東大会でも、4試合で計57安打、37得点と猛打で準優勝しセンバツ出場に近づいた。 富士学苑との「忘れられない試合」から約半年。センバツ出場が決定し、相沢は主将として「狙っているのは優勝」と明言した。関東大会後も、速球に振り負けることが多かった反省から、約10キロのハンマーをタイヤに向けてたたたくトレーニングで手首から前腕にかけての強化に取り組むなど、強打に磨きをかける。 吉田監督は「久しぶりに、甲子園に行くのが楽しみなメンバー」と頼もしく見守りつつ「夏に甲子園に出ていたら、センバツには選ばれていなかっただろう」と振り返る。3月18日のセンバツ開幕まであと1カ月半。敗戦を糧に成長した選手たちが春の頂点に挑む。【田中綾乃】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇県大会 1回戦 ○10―0 巨摩(五回コールド) 2回戦 ○10―1 日本航空(七回コールド) 準々決勝 ○9―0 甲府工(八回コールド) 準決勝 ○11―1 東海大甲府(五回コールド) 決勝 ○9―3 帝京第三 ◇関東大会 1回戦 ○12―3 拓大紅陵(千葉2位) (八回コールド) 2回戦 ○9―0 白鷗大足利(栃木1位) (七回コールド) 準決勝 ○9―2 浦和学院(埼玉1位) (延長十回) 決勝 ●7―9 明秀日立(茨城1位)