IOCの横暴か?選手第一か? 海外メディアは東京五輪マラソンの札幌移転をどう報じたのか
一方で、IOCの強引な手法に批判的だったのがワシントンポスト紙だ。同紙は「クールランニング。激しい論争の後、東京が五輪マラソンを少し涼しい天候の地へ移すことに合意」との見出しを取り、東京五輪のマラソン、競歩の開催地が、正式に札幌へ変更されたことを伝えた。 開催地変更決定に至る4者協議の内容を伝える中で、「ジョン・コーツ調整委員長は、IOCのトーマス・バッハ会長が東京都民に今回の判断への理解を求める手紙も読み上げた。IOCは、東京がマラソンと競歩の開催地変更に関する費用を支払わず、競技開催のために負担した都市側の費用についても返済することに合意した」と説明。 今回の騒動を「東京とIOCは、2013年に日本の首都での五輪開催をすると宣言した際に、夏の高い気温に関する懸念をはぐらかしていた。東京への招致では、東京側は『東京は、選手たちが最高のパフォーマンスを出せる温暖で晴れの日が多い理想の天候にある』と主張。IOCは『天候的な理由から(東京を)選んだ』と言及していた。専門家は、夏に五輪を開催する本当の理由は『天候ではなく金にある』と話している。五輪が開催される8月は米国や世界各地のテレビ放送の要求に合致し、最も利益を生む時期にある」と、IOCへの皮肉をこめてまとめた。 海外のメディアや、ファンも9か月後の東京五輪への関心はまだ薄く、これらの記事に対するコメントもそう多くはなかった。 だが、「東京のコンディションがどれだけ完璧なものなのか実証するために、都知事を華氏90度(摂氏約32度)、湿度60%の部屋に呼んでランニングマシンでマラソンを走らせるべきだったんだ」という選手ファーストの場所変更を支持する声や、「なぜ今頃までこういう問題を放置してきたのか」と、開催地決定から、6年間も、この問題が放置されてきたプロセスを批判する声も寄せられていた。 選手ファーストの見地から東京の酷暑で行うマラソンに対しての議論が起き、開催場所変更案が出るのはもっともだが、なぜ、その指摘が今ごろになったのか。突然の変更が、先のドーハの世界陸上での棄権者続出の悲劇を受けてのものであるならば、もし世界陸上がドーハで行われていなければ、このまま変更がなかったのか。東京を開催地に選び、その後の準備、運営を定期的にチェックしてきたはずのIOC側の横暴はもっと厳しく批判されるべきで、今後の五輪のあり方も考え直す必要があるのだろう。