問題続出のリオ五輪の背景にある経済悪化
「Welcome to hell!」(地獄へようこそ!) 五輪開幕まで1カ月余りの7月末、リオ国際空港の到着ロビーに掲げられた垂れ幕は、「リオは危険極まりない町」、「五輪観戦のためブラジルに行くのは命がけ」というイメージを世界中の人々に植えつけた。 垂れ幕を用意したのは、リオの警察官と消防士。「給料の遅配が続き、生活できない」、「任務遂行のための設備、装備も不十分で、今年前半だけで60人が殉職した」として、「これでは外国からやってくる選手、役員、メディア、観光客の安全を守れない」と訴えた。 地元記者は、「状況が劇的に改善されなければ、五輪期間中、警官や公務員がストライキをして、町が無法状態となる可能性がある」と指摘する。その背景には、リオの州と市の財政が破綻しており、公務員への給料遅配が常態化しているという悲惨な現実がある。 リオは世界有数の犯罪都市だ。犯罪の発生頻度を日本と比べると、強盗が500倍以上で殺人が20倍以上。警察が頼りにならないから、自分の身は自分で守るしかない。 ジカ熱も心配だ。南半球にあるリオは暦の上では冬だが、好天の日は気温が30度を超え、蚊の発生が増える。ワクチンがないので、肌の露出を減らす、防虫スプレーをかける、といった対策が必要だ。 テロも怖い。ブラジル国民の大半はカトリックで、イスラム教徒は少なく、宗教的な対立はほとんどない。これまで宗教、政治の対立に起因するテロは一度も起きていないが、それだけに「ブラジルの警察にはテロ防止のためのノウハウがなく、イスラム過激派が観光客を装って入国してテロを企てたらほとんど無力」(リオの有力紙「オ・グローボ」)。6月下旬、イスラム国(IS)と連携してテロを計画した容疑でブラジル人10人が拘束されたが、彼らは氷山の一角かもしれない。 競技施設は突貫工事で何とか間に合わせたが、テスト大会が実施できなかった施設が少なくない。多くの施設で五輪がぶっつけ本番となり、トラブルが頻発しそうだ。 ヨット競技などが行なわれるグアナバラ湾、ボート、カヌー競技などが実施されるロドリゴ・デ・フレイタス湖には周辺の下水道から未処理の糞尿やゴミが大量に流れ込み、「巨大なトイレ」状態。選手たちは戦々恐々で、サンパウロの日刊紙「フォーリャ・デ・サンパウロ)は「選手たちに深刻な健康被害が起きると考えるのが普通」と断じる。