<でっかい夢・’21センバツ大崎>/下 先輩連れて夢舞台へ /長崎
自分たちが先輩を甲子園に連れて行く――。全国で戦える実力を備えながら、コロナ禍で夢舞台の土を踏めなかった3年生の思いを受け継ぎ、秋山章一郎主将(2年)率いる新チームが2020年夏、発足した。 順風満帆の門出ではなかった。8月上旬、長崎日大との練習試合ではミスが相次ぎ、打線も振るわず3試合全敗。19年秋以降、練習試合も含めて県内で無敗を貫いていただけに、チームには動揺が走った。 「先輩たちの記録を途切れさせてしまった」。責任を痛感した秋山主将は人一倍厳しい姿勢で練習に臨んだ。スラッガーがいないため、バットを短く持ってコンパクトに振る「ショートスイング」をチーム全体で練習し、つなぐ打撃を徹底。前主将の坂口航大さん(18)ら引退した3年生も度々グラウンドを訪れては指導に加わった。 迎えた秋の大会。県大会決勝で長崎日大を7―3で降してリベンジを果たした大崎は、九州大会でも躍動した。明豊(大分)や福大大濠(福岡)など甲子園常連校を次々と撃破。4試合全てで逆転勝ちし、初の九州チャンピオンに輝いた。計39安打のうち長打はわずか5本。チームの真骨頂の“つなぎと粘り”の野球を存分に発揮した。 「小さな島の でっかい夢 甲子園」。九州大会準々決勝で延岡学園(宮崎)に勝って4強進出を決め、センバツ出場に大きく近づいた瞬間、三塁側スタンドで保護者らが用意した横断幕が揺れた。試合を見守った坂口さんは後輩の成長に目を細め、坂本安司投手(2年)に変化球などを伝授した前エースの田中駿佑さん(18)は「エースらしくなったな」と目を赤くした。 「目的は甲子園に出ることじゃなく、勝つことだ。満足するな」。センバツ出場が決まった1月29日夕。清水央彦(あきひこ)監督は、グラウンドに整列した選手たちに発破をかけた。 甲子園出場の約束は果たした選手たちだが、「先輩や島の方々への恩返しは10のうち3ぐらいしかできていない」と秋山主将。「自分たちの戦いぶりを見て先輩たちに心から満足してほしい。そのためには3年生を超える実力をつけなければいけない」と満足する様子はない。 目標は「甲子園優勝」。ナインの“でっかい夢”は膨らみ続ける。(この連載は中山敦貴が担当しました) 〔長崎版〕