進学、就職……発達障害がある我が子の将来が不安。発達支援はどう変わるべき?
視覚情報が入りやすく、何をするかが分かっているとパニックを起こさず取り組める長男のために、りっきーさんが「おめめどう」のアイテムを使って手書きした注射の説明や運動会のプログラム。 参照::『感覚統合の視点で「できた!」が増える!発達が気になる子のためのおうちモンテッソーリ』(日本能率協会マネジメントセンター)
発達障害のある子が健やかに生きていくために
――「これからの発達支援のあるべき形」についてもお話しいただけますか? 小嶋:まずは「早期発見」「早期療育」をどう実現していくのか。これが極めて大きな課題でしょう。アメリカでは「ペリー就学前教育」という研究結果が出ていて、幼い頃の良質な教育が子どもの発達や生涯にどういった影響を及ぼすのかということが明らかになっています。それによると、やはり幼児期の良質な教育が良い予後につながると言うエビデンスが出ています。だからこそ「早期発見」「早期療育」が重要なのに、いまの日本では、診断が下りた後のサポートが薄い。保護者は「じゃあどうすればいいの?」と困っている方が多いと思います。 りっきー:本当にその通りです。 小嶋:しかし、たとえばボストンの学校なんかでは、専属の言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、カウンセラーがいます。さらに最近では、子どもの行動改善を促す「Behavior Specialist (ビヘイビア スペシャリスト)」と呼ばれる人たちもいる。つまり、子どもの発達支援に国家としてお金をかけて力を注いでいるんです。でも日本では、高校に上がると特別支援学級が無くなりますし、高校生への発達支援に対する考え方が未熟。そこを国家としてどう改善していくのか。「早期発見」された子どもたちが、小学校から高校を卒業するまでムラなく支援されるシステムを構築してほしいと思っています。 りっきー:親としてもモンテッソーリの講師としても、非常に共感します。日本の支援体制では、どうしても先が見えない。中学、高校、就労までの情報が少なすぎて、不安を持つ親御さんはとても多いです。学校の先生に相談してみても、卒業後のことはあまり詳しくないことも。そんな風に情報が少ないから、診断が下りることを怖がる親御さんもいるのだと思います。 小嶋:私がこれまでに担当してきた発達障害のお子さんたちは、成人して多くの方が就職していて、幸せに人生を歩んでいるなと感じています。 りっきー:そんな風に、大人になっても社会の中で楽しくやれている事例を知ることが出来たら、保護者としても安心できる気がします。いろんな苦労があるけれど、頑張って生き抜いている当事者の情報がもっともっと欲しいですね。 小嶋:そうですよね。ただ、大人になってもやはり生きづらさは抱えている。それを抱えながらも、本人が努力をしてなんとか生きているわけです。それなのに周囲の人たちは、当事者の障害を「過去のこと」にしてしまっているフシがあります。「あの頃は大変だったよね」と。そうではなく、大人になっても生きづらさがあることをちゃんと認めなければいけません。その上で、どうやってそれをカバーしながら生活しているのか、ポジティブに発信する場があると、次世代の子どもたちにとっても希望になるかもしれませんよね。