建設用電線市場、新規受注再開で需給緩和へ。低圧品は春にも正常化
タイト感が根強かった建設用電線市場で需給が緩和してきた。これまで需給の大幅なひっ迫を受け大手メーカー・販売会社では昨年から新規受注を一時停止する動きが広がっていた。だが需要期が過ぎる中、2~3月に各社が新規受注を再開。市場の過熱感は収まってきており業界では「日ごとに状況は落ち着いてきている」「ひっ迫が収まってきた」(建設用電線大手企業幹部)と市場環境の変化を実感する声が多く聞かれる。ボリュームが大きい建設用低圧電線については、春ごろに需給が正常化するのではとの見方が市中では多い状況。 建設用電線は国内銅電線市場の約半分を占める主力品種。その需要期は年末・年度末完工物件向けの10~12月。今回の需給ひっ迫の明確な原因は明らかになっていない。ただ今年度はコロナ禍で減っていた工事が動き出したことや、電気工事現場の人手不足などによる納入時期のずれなどから需要が例年以上に下期に集中したとの声が聞かれる。また設備投資関連のニーズが旺盛だったことも要因として考えられるほか、ひっ迫が進む中で不安による製品確保の動きが市場の過熱感に拍車をかけたとの見方もある。 ただ足元の市場は沈静化が進む。「1月後半から徐々に需給が緩和し2月にその動きが強まった」「2月は引き合い・受注が多かったが3月に入り徐々に落ち着いてきた」(業界大手企業)などペースに差こそあるが、需要期が終わったことや大手各社が新規受注を再開し市場に流れる商品が増えたこと、その動きに伴い顧客の不安感が薄らいできたことなどが寄与したとみられる。ただ市中では、市場正常化にはまだ至っていないとの見方が大勢を占める。 品種別の動向については低圧品では「サイズで濃淡はあるが全般的に落ちついてきた」「一部サイズでひっ迫感はあるが全体的に落ち着きつつある」(関係筋)との声が市中から聞かれる。足元は「すでに正常化に近い状況」とする見方もあり、春ごろには需給が正常化するのではという大手企業が多い。 高圧品は業界で受注制限が完全には解除されていないもよう。低圧品ほど需給が緩和していないとする企業が多いが、その中でも「一時期に比べある程度先が見通せるようになってきた」「最もひっ迫していた昨年秋から冬ほどではない」(大手企業幹部)状況。ただ「高圧・低圧問わず需給が緩和している印象」とする大手メーカーもある。 目先についてはこれまでの市場の過熱感を需要の先食い要因として懸念する見方が大勢。ある大手メーカーの幹部は「(市場に対応するため)懸命に製造してきた。そこで注文が急減すると厳しい」と話す。 一方で大手メーカーでは今後再び需給がひっ迫する可能性も否定できないとの見方も。ピークを抑える生産の平準化は需要増の中での安定供給につながる。同社では平準化に向け「決まっている建築案件向けの注文は極力早期に出してほしい」と呼び掛ける。先の情報をもとに早期に準備を進めることで、生産・供給がしやすい状況となり、顧客により安定的に製品を届けられるようになる。