住民投票で「大阪都構想」が決まる? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が5月17日に行われます。大阪市民を対象としたこの住民投票の結果、賛成多数であれば、大阪市を5つの「特別区」へ再編することになります。橋下徹大阪市長が目指してきた都構想は最終局面を迎えています。住民投票で賛否を決する運びとなるまでにどのような経緯をたどったのか、この住民投票はどのような位置づけなのか、振り返ってみましょう。 【図】17日に住民投票「大阪都構想」そもそもの狙いは?
2012年に「大都市法」が成立
橋下氏は、現職が不出馬となった2008年の大阪府知事選挙で、タレント・弁護士から転身し、自民党府連の推薦も得て当選しました。10年になると大阪府の政令指定都市である大阪市と堺市を解体して東京23区に近い形に改める「大阪都構想」を打ち出し、その実現を果たすべく地域政党「大阪維新の会」を結成。代表へと就任しました。 11年の統一地方選挙では維新が府議会で過半数を占め、大阪市議会でも過半数には及ばなかったものの第一党へと躍進します。当初は仲が良かった当時の大阪市長が都構想に難色を見せるや、任期満了にともなう同年11月の市長選で橋下氏が知事を辞任して立候補して勝利しました。同時に行われた府知事選も維新の候補が勝つなど、この頃までは飛ぶ鳥を落とす勢いでした。 ただし、この段階でいくら都構想をとなえても国の法律がそれを認めていませんでした。橋下人気やその訴えにそれぞれの思惑を抱いた民主、自民、公明など国政の主要政党が後押ししようと一致し、2012年8月に「大都市地域特別区設置法」(大都市法、都構想法)が国会で成立、所定の手続きを踏めば、東京23区と同じような「特別区」を人口が多い8地域で作るのが可能となりました。具体的には、札幌、さいたま、千葉、横浜、川崎、名古屋、京都、大阪、堺、神戸の8地域、10政令指定都市が対象です。この所定の手続きの一つが「住民投票」なのです。
3月に大阪市議会で協定書を可決
ところが、この後に難航します。13年9月に行われた堺市長選挙で維新の候補が都構想反対を訴える候補に敗れて、堺市が離脱します。大都市法に定められた法定協議会の協定書案も「維新vs.他の政党ほとんど」の対立構図でなかなかまとまらず、やっとできても14年10月の大阪府・市両議会で否決されて廃案。もはやこれまでか、というところまで追いつめられました。 そこに助け船を出したのが公明党本部です。大都市法では、制度案の設計図にあたる協定書を議会で可決したら最終的に大阪市民の住民投票で決する決まりで、同党は「協定案には賛成しかねるが住民投票実施には賛成」と方針転換しました。府市議会ともに維新に公明を加えれば過半数となります。結局、以前廃案となったのとほとんど変わらない内容の協定書案が、今度は賛成多数で可決され、2015年5月17日の住民投票で決する運びとなったのです。 公明党は態度を変えた理由として14年末の衆議院議員総選挙で大阪府内の比例代表の得票数のトップが維新の党(=国政政党。大阪維新の会は大阪府総支部に位置づけられる)であったから、としています。