住民投票で「大阪都構想」が決まる? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
法的拘束力がある住民投票
一般に「住民投票」というと、法律の範囲内で自治体が制定できる条例によるものを指します。これらに法的拘束力はありません。しかし大都市法における住民投票は法的拘束力があり、1票でも上回った方の結果に従わなくてはなりません。有権者約215万人が対象となる壮大な判断で、仮に賛成派が勝てば2017年4月に「都構想」が実現します。ただし「都」と名乗るには法律改正が必要です。反対派が勝てば今のままの大阪市が存続します。この場合、橋下市長は政界引退を表明しています。 可決された協定書によると、大阪は北区、中央区、南区、東区、湾岸区の5特別区に分割されます(現在は24の行政区)。全国に20ある政令指定都市も「区」はありますが、これは行政区で、区長は市長が任命し、区議会もありません。対して、大都市法に基づく特別区には区議会があり、区長も区議会も公選です。
「二重行政の解消」なるか
橋下市長が都構想を目指す理由として常に掲げ、反対派は根拠が薄いとしている最大の争点の一つが「二重行政」の解消です。政令指定都市は道府県の事務権限のほとんどを委譲されます。規模が大きくて身近な仕事をすべき市の手が届かない状況を解決するため市民感覚に沿ったまちづくりなどが直接できるという利点があるとされています。 橋下市長はそうした利点よりも時に「府市合わせ」(不幸せ)と呼ばれる府と市で張り合った結果、生じた“ダブり”が大いに無駄であり、それをなくすと主張しています。反対派もトーンはさまざまですが二重行政の弊害がないと断言している政党はごく少数です。論点は都構想でどれだけのムダが削減できるのか、新たなムダが生じないかというところで、両者一歩も譲らず戦っている最中です。また大阪市民にとって政令指定都市のままの方が暮らしやすいという主張もあれば、特別区になってこそできるサービスもあるという訴えもあります。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】