いてまえ打線のリードオフマン大村直之さんは今?~大失敗のヒーローインタビューで繋がった縁~
■失敗の理由は取材不足 翌日の練習終了後、彼のところに行き、「大村さん、きのうはうまく話が聞けなくてすいませんでした」と声をかけた。すると大村さんは「いや、あんな盛り下げるような受け答えしちゃって、申し訳なかったです」そこから、巧打者・大村直之はバッティングへのこだわりを話し始めた。 「強打者の多いこのチームで、僕の役割はホームランを打つことじゃないんですよ。だからホームランはたまたまという感覚なんですわ。普通に見たらナイスバッティグでも、僕の中でそういうものではないんです」 「じゃあ、大村さんにとってのベストな当たりはどんなものなんですか?」 「アウトコースの、ストライクゾーンギリギリに落ちていく変化球を、バットの先に乗せてレフト前に落とした時ですね」 この考えがあるから、私のヒーローインタビューでの「ホームラン=ナイスバッティング」の質問は否定されたのだ。 「だって、そんなバッティングでヒットになったら、ピッチャーも嫌でしょ」 これがプロ通算1850本以上のヒットを打った安打製造機の極意だった。 ■実況で彼の打撃信念を伝えた その日を境に、大村さんと私はグラウンド内外で話をするようになり、野球についていろいろ学ばせてもらった。 私が実況している時、彼は、理想としているヒットを何度か打った。その時には「レフトの前、フラフラっと上がった打球、落ちましたー!ポテンヒットではありません。大村直之の、磨き上げた技術が詰まった、狙い通りのヒットです」と職人のこだわりを伝えた。 ■引退後14年、今の生活は? 海外から帰国して6年、生まれ故郷の兵庫県に戻って今は何をしているのか聞いてみた。 「特に何もしてません。自由に生きてますわ」 海外にいる時と何も変わっていなかった。 「健康には気づかってますよ。毎日、ジムに通って、サウナで汗を流す。食事は小麦粉・砂糖・乳製品・植物油は摂らない食事を心がけてます。現役時代より体重は4キロ落ちましたわ。あと、睡眠の質を高めるようにしてます。そうしたら、朝の目覚めがいいんですよ」 押し寄せる年波との戦いでも、抜かりなく対策を立てるあたりが、大村さんらしいところだ。
■現役時代、唯一の心残りが・・・ そんな大村さんから、あるお願いをされた。ソフトバンクからオリックスにトレードされた時と、現役を引退する時、応援してくれていたファンの方々に感謝の気持ちを伝えられていないことが、ずっと心の隅に残っていたと言う。 「現役時代、声援を送って下さったファンの皆さん、本当にありがとうございました。皆さんの応援があったから、あれだけのヒットが打てました」 打撃職人が、残っていた最後の仕事を終えた。 RKBアナウンサー 櫻井 浩二
RKB毎日放送