静岡大に就任後3人のプロを育てた高山慎弘監督の指導論とは…17日には広島育成3位・安竹俊喜捕手の入団会見
今秋のプロ野球ドラフト会議で広島育成3位で指名された静岡大・安竹俊喜捕手(23)の入団会見が17日に行われる。同大からは昨年、広島育成2位で入団した佐藤啓介内野手(23)に続くプロ入りで、国立大から2年連続の指名は珍しい。2018年秋にコーチから昇格した高山慎弘監督(43)が就任して以降、3人目で、ここ数年でなぜ地方都市の国立大からプロ選手を送り込めるようになったのか。選手育成や独自のスカウティング術など秘けつを探った。 **** 野球界でドラフト指名される選手は、毎年ほんの一握り。プロの世界を夢見る人間が通らなければいけない“関門”だ。そんな憧れの舞台に、地方の国立大から2年連続で教え子を送り出したのが、静岡大の高山監督だ。「教え子という表現はあまり好きじゃない。自分自身が行けなかったプロへ代わりに行ってくれた子たちという思いの方が大きい」。同大を指揮する外部監督は、合計3人のプロ選手を輩出した。 決して、素材に恵まれた選手が集まるわけではない。全国的にほぼ無名。「走攻守そろった選手はなかなか来ない。選手には一芸を磨くようにしている」。2019年に阪神育成2位で指名された奥山皓太外野手は肩の強さと足を売りにした。23年に広島育成2位で指名された佐藤は、打てる二塁手として育てた。今年の捕手・安竹はキャッチングでアピール。個々の長所を伸ばす指導に徹した。 一番の苦労はスカウティングだ。同大は推薦枠がなく、毎年いい選手を獲得できるわけではない。簡単には入学できないため目に留まった選手がいても、なかなか手を出せないのが現状。そんなハンデを高山監督は“人脈”でカバーしている。 東京在住の起業家で、週末、静岡に来て学生を指導する指揮官は、自身を「野球オタク」と評する。東京の野球好きが集まる居酒屋「あぶさん」の常連で、その全国各地にいる仲間から情報を集めて選手獲得に役立てる。「中にはマニアックな人がいて、あまり強くないけど、頭のいい県立校の好選手を教えてくれる方がいる。そこから、学校に連絡して練習会に来てもらう」と、笑う。 常にアンテナを広げて地道に選手を発掘。大学野球のパンフレットに載る選手の出身校に聞いたことのない高校を見つけるとネットで調査。大学の資料を送り、直接、足を運ぶこともある。ドラフト指名効果も重なって自身の学生時代は25人ほどだった部員が、今では90人を超える。その中から、一人一人の個性を見極めて指導している。 ドラフト指名された3選手には共通点があるという。「自分で意識してトレーニングする。しっかり体をつくれる選手たちだった」。今後の指導者としての目標は、過去3度出場しながら、いずれも初戦敗退した全国大学選手権で勝つこと。そして、「選手は一人でも多く、プロや社会人など野球を続けてほしい」。野球オタクの監督は、強く願っている。 (塩沢 武士) ◆高山 慎弘(たかやま・まさひろ)1981年2月24日、浜松市生まれ。43歳。小4の時に浜松リトルで野球を始め、浜松北部中から浜松商に進み、高校では控えの捕手。静岡大卒業後は東京で就職し、2013年に起業。静岡大コーチとして2014年の大学選手権出場に貢献し、18年春季リーグ後、同大監督に就任した。家族は夫人。176センチ、81キロ。右投右打。
報知新聞社