「視点」こそが人生を変える”道しるべ”…「リピーターを作るために」起業家が持つべき「ミクロ」と「マクロ」の考え方
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第75回 『「視点を変えれば世界が変わる」…「コップの水」と「一匹の子猫」から考える、夢を実現するための驚きの発想とは?』より続く
世界はつながっている
第一章で触れた夢の話、起業家は夢を持っている、それは「世界を変えたい」「〇〇な世界をつくりたい」という夢だという話をしました。世の中にある「痛み」に共感して、その痛みをなくす世界をつくり上げたいのだと。 第四章で紹介した日本の起業家ですが、彼女は「肌が弱い妹でもおしゃれを楽しめる化粧品」を作りたいと考えました。すぐそばで生活している妹にピントが合っていたのです。 スタートはそれでも、彼女は即座に「妹のような女性は数多く存在する」と視野を広げます。妹のためだけに化粧品を作ればそれで話が終わったはずが、起業につながっていくのは、身の回りにある痛み、ミクロな視点から、社会に存在する痛み、マクロな視点へと「ひとつながりの痛み」として認識できたからです。 ミクロの視点だけではビジネスにはなりません。マクロな視点だけでは、顧客の心理から離れてしまいます。ズームイン、ズームアウトして、そのどちらにもフォーカスを合わせることが欠かせません。 ミクロの課題とマクロの課題は必ずつながっています。それを切り離すことはできないのです。
起業家として、最善を考える
大航海時代を思い描いてください。航海技術は発達している。どうやら世界は丸いらしいことも認知されている。しかし、当時の世界の中心たるヨーロッパから見ると、大西洋を渡った経験はなく(当然、アメリカ大陸は未知の存在)、世界地図などというものは、極めて不正確。 そんな時代に、「比較的正確な地図ができていて、見知った海」を航海するのは安全です。何を貿易するかも読めていて、利益も上がりやすいでしょう。危険に関する情報が集まっている航海です。これをRisk Managerによる航海と呼びます。既知の世界を行き来するわけです。 一方、アフリカ大陸の海岸伝いにインドを目指す航路を行くのは、行ったことはないけれど、なんとなく道筋はわかる航海です。Uncertainty Navigatorによる航海、不確実性が高まった世界ではあるが、海岸線という、ある程度たしからしいガイドは存在します。 最後がAmbiguity Explorer、道なき道を行く、未知の大西洋を西に突き進む航海、地図もない、海岸線もない。あるのは東西南北を示す羅針盤だけ。それと、「地球は丸い。東にあるインドには、逆に西に突き進めばたどり着くはずだ」という夢です。 マゼランが世界周航を達成する前、ヨーロッパからインドにたどり着くには、陸路を行くか、アフリカ大陸を大回りするしかありませんでした。西に直進してインドにつけば、もっと楽かもしれないという夢があったのです(実際には間にアメリカ大陸が存在したのですが)。 リスク管理をしてより安全な方策を考える、比較的に不確実だがそれでもガイドラインがある方法を考える、未知で予測不可能な方策を考える。この3つはどれが優れているというわけではありません。ビジネスのタイプやステージ、社会環境でも変化するでしょう。 しかし、起業家ならば、自分がどのタイプなのか、仲間とするならどのタイプがいいのか、考える必要があります。 目の前に見える世界と、もっと広い、自分では見たことがない世界。妹の話と世界の話。地中海の話と大西洋の話。すべてつながっている世界です。