どうなる横浜市新市庁舎 槇文彦氏らがデザイン計画を公開議論
2020年の完成・移転を目指して新市庁舎の設計を進める横浜市が4月27日、設計者によるデザイン計画の説明とまちづくりや建築の専門家との質疑応答を公開で行う「デザインレビュー」を開いた。 新市庁舎整備は、施工会社の竹中・西松建設共同企業体(JV)が基本設計から施工まで一括して担当するデザインビルド方式を採用している。前例のないやり方に、専門家からは危惧する声も上がっていた。
今回の会を主催した日本建築家協会関東甲信越支部神奈川地域会(JIA神奈川)では、「優れた設計者あるいは建築家が主導的な役割を果たすべきである」と横浜市に要望書を提出するとともに研究会を設置し、事業提案計画作成に際し特に留意すべき事柄などについて、横浜市と意見交換を行ってきた。結果的に以前から竹中・西松JVに声をかけられていたという槇総合計画事務所がデザイン監修を務めることとなった。同事務所は新市庁舎建設予定地に隣接する横浜アイランドタワー(2003年落成)を竹中工務店らと共に手がけた経験がある。
計画案コンセプトについては槇総合計画事務所の槇文彦氏と福永知義氏、技術提案については竹中・西松建設共同企業体設計チームの萩原剛氏が説明した。
高層部は白いシルクの質感を基調に、低層部には街の中心となる屋根付き広場
周辺のみなとみらい21地区や北仲通地区の高層建築群との調和を目指す高層部のデザインは、白いシルクの質感と垂直性を基調としている。垂直ラインを構成する白いアルミのマリオン(方立)と、眺望と環境性能を兼ね備えたダブルスキンカーテンウォールが特徴で、西面と東面には日照をコントロールするためにガラス面にセラミックプリントを施す。 市民が自由に集い活動する「街」のような低層部には、式典・イベントスペース、市民の憩いの場・活動の場として使える屋根付き広場(アトリウム)を設置。開かれた市庁舎として、周辺エリアを結ぶ街の中心となり、多用な活動や賑わいを創出することを目指す。
「にぎわいも大事だが、孤独を楽しめる場所も大事」
都市計画を専門とする横浜国立大学の野原卓准教授の「どのように『開かれた市庁舎』を作りこみ、使いこなしていくのか」という質問に対し、槇氏は「これからの建築は、建築家や施主が想像していなかったような使い方をできるような汎用性が大事な時代になってきている」と回答。福永氏も「横浜らしいものを展開したい。これからワークショップで市民と議論していく中ででてきてくれたら」と話した。 また、槇氏は30年前に手がけた複合文化施設「スパイラル」(港区青山)の例を挙げ、「これまでテナントの使い方はいろんな形で変わってきたが、ぼんやりと青山通りを眺められる椅子を使う人々の姿は変わらない。にぎわいも大事だが、そうした孤独を楽しめる場所を作ることも大事」と話した。
市民に親しまれる市庁舎づくりへ
これまでも、地元の商工会議所や商店街と共に新市庁舎の活用を考えるシンポジウムやワークショップを開催してきた横浜市。会場は予定地や現市庁舎のある中区中心だったが、5月~6月には市内北部・中部・南部の3回に分けて「新市庁舎の『ひろば』を考えるシンポジウム」が開催される。ゲストはそれぞれ地元で活動するNPOの代表や公共空間作りの専門家で、市の担当者や設計チームも参加する。 6月以降はワークショップなどでアイデアの提案や取り組みの成果の公表を行い、併行して設計作業を進める。設計完了・工事着工は2017年夏を予定している。 (齊藤真菜)