【漫画家に聞く】友人となぜかうまくいかない一日ってない? 地味にチクチク&ホッコリするSNS漫画『とほとほ』に共感
海辺にある観光スポットへ訪れた2人のやり取りを描く漫画『とほとほ』が2024年5月にXで投稿された。紆余曲折ありながら、ともに歩く2人。彼女たちに待ち受けていた出来事とはーー。 人間関係の機微が共感を呼ぶ漫画『とほとほ』 作者・あぶらめちかたさん(@zrsbkitin)によると、本作には舞台となった場所があると言う。本作を創作したきっかけや作品のテーマなど、話を聞いた。(あんどうまこと) ーー本作を創作したきっかけを教えてください。 あぶらめちかた(以下、あぶらめ):人間関係の失敗談を描いてみたかったことが創作のきっかけです。友だちとトラブルになることが多いので、このテーマなら描きやすいかなと思い本作を創作しました。 ーー本作はある種の失敗なんですね。 あぶらめ:良かれと思ってやったことがうまくいかず、うまくいかないことがどんどんと転がっていくーー。そんなお話として描きました。 ーーなぜ人間関係の失敗談を描こうと思った? あぶらめ:面白いと思うからです。自分が良いと思ってやったことは、相手にとって良くないことだったりする。こういったすれ違いが起こると悔しい気持ちを抱きますが、これを誰かに伝えたいという気持ちも大きくなるんです。 失敗談、とくに人間関係の失敗談を面白いこととして伝えたくなる。だから失敗に興味があります。 ーー靴を1足ずつ交換するシーンは、失敗とも解釈できる出来事かと感じました。 あぶらめ:そうですね。本作に登場する2人には体格差があり、靴のサイズも大きく異なります。そんな2人なので、もしも両方の靴を交換してしまうと背の高い女の子は靴を履けず歩けなくなってしまいます。そのため片っぽだけ交換できなかったという背景があります。 ただ、このシーンではそういった背景だけでなく、2人とも歩きづらいなか完全に助けることはできないけれど、ちょっとなら手助けしてあげられる、痛み分けとしての気遣いを描きたいと思っていました。 ーー印象に残っているシーンは? あぶらめ:岩の飛び出た草原が、引いた構図で映るシーンです。このシーンは青森県にある種差海岸が舞台となっており、好きな場所なので描いていて楽しかったです。 ーー俯瞰した視点で描かれる、2人の転ぶシーンが印象に残っています。 あぶらめ:このシーンを描くなかで、2人の様子を俯瞰的に描いた方が馬鹿馬鹿しく見えると思いました。転んでいる人を近くから見ると、痛そうだなとか、ビックリしたといった、自己投影した感情を抱きやすいです。ただ遠くから見ると「あ、転んでる」くらいの他人事として捉えやすいと思います。 本作では読者に失敗談を面白がってほしいっていう思いがあったので、このシーンでは俯瞰した構図を設定しました。 ーー本作に登場する2人の関係を描くなかで意識したことは? あぶらめ:人と人とは完全には理解し合えないと思っており、この2人も勝手知ったる仲ではありますが、思っていることややりたいこと、考えていることは違っていてーー。 ただ、それでも付き合っていかなければならない。そのなかで、ときに生まれる可笑しさみたいなものを本作で表せたらいいなと思っていました。 私自身、人と衝突することはストレスになるけれど、嫌いじゃないんです。本作で2人は小競り合いをしていますが、その様子を居心地よく感じるように描けたら、作品が面白くなるんじゃないかなと思いました。 ーー人との衝突が嫌いではない理由は? あぶらめ:仕方がないからですね。幼い頃から人と衝突することが多かったので、私の生活には人との衝突がしょうがないこととして組み込まれていて。その中でどうやって生活を面白く乗り切っていくかと考えています。 ーー今後の目標を教えてください。 あぶらめ:作るもの出来に関する目標として、まず自分が読みたい内容の漫画であること、次に読者の人が楽しめる漫画であることを心がけたいです。その2つがクリアできたら、さらに自分も読者も、何回も読み返したいと思えるような漫画を描けたらいいなと思っています。
あんどうまこと