発症すると致死率100% 国内で根絶した狂犬病の流行再燃が懸念されるワケ
◇国内流行再燃への警戒
もう1つの懸念は国内流行再燃の可能性です。日本では1950年の狂犬病予防法制定により、飼い犬へのワクチン接種が義務付けられ、接種率は100%近くを維持してきました。しかし、この数値が2000年以降80%を切るようになり、最近では70%近くまで落ちています(いずれも厚生労働省の集計)。今年の2月、群馬県で多くの人々にけがを負わせた飼い犬も、狂犬病ワクチンの接種を受けていませんでした。 WHOによると、イヌのワクチン接種率を70%以上に保っておけば、その国に狂犬病の感染動物が持ち込まれても、流行は再燃しないそうです。つまり、現在の日本の接種率はギリギリの数値であり、もう少し接種率を上げておく必要があります。 では、今後、狂犬病の感染動物が国内に持ち込まれる可能性はあるでしょうか。正式なルートで輸入された動物については検疫で対応しますが、密輸などで持ち込まれた場合は、感染動物が国内に入る可能性があります。さらに、コウモリの危険性が指摘されています。この動物も狂犬病ウイルスの感染源になり、種類によっては活動範囲がかなり広いことが知られています。今後、海外から飛来するコウモリが、狂犬病ウイルスを国内の動物に感染させる可能性もあるのです。 台湾でも、一時、狂犬病の根絶宣言が出されていましたが、2013年に野生動物の調査を行ったところ、アナグマの感染が確認されました。今後、日本でも野生動物の狂犬病調査を行うなどして、侵入を早期に感知する必要があります。 狂犬病は致死率が100%という大変に悲惨な感染症です。日本国内ではこの病気を70年近く前に根絶したために、多くの国民がその恐ろしさを忘れてしまっていますが、この感染症についての関心を再び高めていくことが大切だと思います。なお、厚生労働省は、現時点で国内の動物にかまれても「狂犬病の心配はない」との見解を示しています。
メディカルノート