“飛ばない野球”で3被弾…球速ハッキリと落ちた中日・大野 パワーピッチャーからの路線変更考えるチャンスか
◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」 ◇29日 中日1―5DeNA(バンテリンドームナゴヤ) ◆涌井秀章に「ゆーでぃー」と呼ばれる「ドラゴンズの大将」大野雄大【写真】 牧、牧、桑原。衝撃の3被弾で大野が沈んだ。僕のほのかな期待は、1回でぐらつき、4回に倒れ、5回で溶けた。ただし素朴な疑問は抱く。1軍では2試合で防御率9・95も、2軍では7試合で2・45。その中には7失点のソフトバンク戦が含まれており、残りの6試合なら1・26。なぜ2軍で抑えられて、1軍では打ち込まれるのか。 「そりゃ2軍では力が入らないからですよ。でも1軍では決めにいくときに力が入っちゃう。そうすると投げミスしちゃう」 2軍と1軍の違いを明快に説明してくれたのは、岩瀬仁紀さんだ。大野クラスの投手でも久々の1軍戦で力みが出たのかと問うと、岩瀬さんは首を横に振り「スピードが出ない。そのことを本人がどう思うかですよね」と言葉を重ねた。 大野は球威でねじ伏せるパワーピッチャーだ。ところが手術の影響か、年齢の問題か、球速はハッキリと落ちている。1回の牧は141キロ、5回の桑原は140キロをフルスイングで飛ばされた。「スピードが出ない。でもムキになって力でいった」。その結果が被弾だと岩瀬さんは見る。 「力で勝負するのではなく、モデルチェンジするのか。飛ばないと言われている今の野球で3本打たれたというのは、それを考えるチャンスともいえますよね」 レジェンドであり、先輩でもある岩瀬さんだが、指導者ではない。だからそれ以上は踏み込まないが、自身のモデルチェンジは話してくれた。 「僕はそうしようと思った瞬間はないけど、気が付いたらそうなってましたね。(右打者の)外のスライダーを覚えてからかな。少しずつ力ではなくコントロールで勝負するピッチングになっていきました」 バックドアスライダーの習得が力から技、速度から制球への転機となり、選手寿命は延びた。もちろんこれはあくまでも岩瀬さんの体験であり、意見。ただ、どんな投手にも必ずその日はやってくる。大野にとって新たなステージへの扉になるのだとしたら、悪夢の3被弾にも意味を見いだせる。
中日スポーツ