クルマだけではない「100年に一度の大変革」 保険の世界では?
「急加速が増えています。ご注意ください」 「テレマティクス保険(以下 テレマ保険)」では、クルマの運転で急加速や急減速が目立つとこのような警告のメッセージが流れます。このテレマ保険、従来の保険に通信機能を持たせることで新たな可能性を広げていこうというものです。急加速、急減速など走行データによって運転傾向を分析、「安全運転スコア」をつくり、保険料の割引につなげていきます。 クルマにもパッシプ・セーフティ(衝突安全)とアクティブ・セーフティ(予防安全)という概念があります。衝撃安全ボディ、シートベルト、エアバッグのような衝突後に被害を最小限にするのがパッシブ・セーフティ、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱防止支援システムのような、事故を未然に防ぐものがアクティブ・セーフティです。スコアによって、安全運転を促し、事故を未然に防ぐ…テレマ保険は通常の保険にアクティブ・セーフティの要素が加わったものと言えるでしょう。 ちなみに、テレマティクスとはテレコミュニケーション(遠距離電気通信)とインフォマティクス(情報システム分野)の造語です。開発したあいおいニッセイ同和損害保険自動車保険部の鈴木厚裕テレマティクス開発グループ長は「走行データに基づいて安全・安心に役立つサービスを提供して、安全運転を促進する。それによって事故を未然に防止する。“事故を起こさせない保険”だ」と語ります。 「見守るクルマの保険」と名付けられたテレマ保険、その原型は2004年に始めた実走行距離連動型保険「PAYD(ペイド)」にさかのぼります。2015年にはイギリスのテレマ保険最大手のITB社を買収。開発の知見を積み重ねていきます。 「テスト用の車両で何度もテスト走行したり、運転感覚と実際のスコアが合っているの検証しながら開発した。世界中の走行データを取得した」(鈴木グループ長) 走行データは昨年(2023年)末の時点で、実に地球414万周に上ります。当初は車載用の専用通信機を使っていましたが、現在はドライブレコーダー、そして今年に入ってスマートフォンでナビゲーション機能と連動して対応できるようになりました。 スマホには「加速度センサー」というものがついています。スマホの動き……机の上にあるのか?手に持っているのか? ポケットにいれて歩いているのか?……これらを検知できるのは、加速度センサーのなせる業です。例えば、スマホについている歩数計は、これを応用したものです。同様にスマホホルダーでテレマ保険のスマホをクルマに取り付けておけば、急加速や急減速の動きも検出できるというわけです。