チャンスでもあり崖っぷち。渋谷のポテンシャルを生かしてWeb3コミュニティを支援──渋谷区長 長谷部健氏【2024年始特集】
行政として「目に見えない革命」を見据える
──2000年頃のビットバレー、少し前のクリプトバレーなど、新しい動きは渋谷からスタートしています。 長谷部:情報の発信地だからではないでしょうか。私が約20年前に始めたごみ拾いのNPO「green bird(グリーンバード)」も表参道で始めたら、いつの間にかメディアに取り上げられ、「うちの街でもやりたい」と広がっていきました。 ファッションでは「竹の子族」とか「ロカビリー族」がいて、バンドブームのときには「渋谷系」も生まれました。「ホコ天」からさまざまなカルチャーが全国に発信され、若い人たちが日本中から集まって、いろいろなカルチャーを発信していった。ただ、以前は「成り上がろう」という人たちが集まってきた街でしたが、今は「成り上がった人」が来る街になっているようにも思います。 また最近はファッションの動きが弱くなっていますが、Web3はファッションやカルチャーとの相性が良いので、もっと化学反応を生み出せないかと思っています。行政が具体的な方向性を決めることは難しいですが、生まれてくるものを見守り、場を提供して、ともに新しいものを生み出したり、課題解決に向かっていきたい。 渋谷が注目を集めることは多いですが、渋谷区は全国の自治体と協定を結んでいます。例えば「ドローンを飛ばして実験したい」と言われても、渋谷では無理ですが、実験が可能な自治体を紹介することができます。税金を使わなくてもできることはたくさんあり、そうした取り組みも進めています。 ──2023年は渋谷でWeb3関連のイベントがいくつか開催されました。どのような手ごたえがありましたか。 長谷部:5月にNFTアート体験型ギャラリーの「Bright Moments Tokyo」が開催されました。聞くところによると、2日間で約7億円を売り上げたそうです。海外から2000人くらいが来場したそうです。「目に見えない革命が起きている」と実感しました。以前のように目に見える形で世の中が変わっているわけではありません。この10年ぐらいのITを活用した革命は目には見えない革命です。だからこそ、革命を理解している人、認識している人だけがメリットを享受している面もあります。我々行政もしっかり見据えていかなくてはなりません。 Web3に象徴されるように、パラダイムが一気に変わろうとしています。大きなチャンスでもあり、ここで乗り遅れてしまうと、もう追いつけない崖っぷちという危機感もあります。円安もあって、海外からたくさんの人が日本を訪れ、渋谷を訪れ、注目してくれているなか、チャンスを生かしたいと思っています。 ──1月12日からアート×テックイベントの「DIG SHIBUYA」が開催されます。 長谷部:初挑戦なので、どきどきしています。区役所周辺を使いつつ、公園通りを封鎖して、アートを見せたり、パレードを行ったり、お祭り的なこともいろいろと仕込んでいます。ロサンゼルスを拠点に活動するFriendsWithYou(FWY)をメインアーティストに迎えて移動式参加型アートを展開したり、深夜のスクランブル交差点の街頭ビジョンを使って映像作品を上映したり、NFTスタンプラリーも行ったりする予定です。 スタートアップやNFT、Web3のコミュニティづくりもここから本格的にスタートさせます。2024年も引き続き、アクセルを踏んで、やりたい人がやりたいことができる街でありたい。渋谷区民だけではなく、Web3時代はこの街に思いを持ってくれている人は皆、コミュニティのメンバーです。「渋谷民」と言ってもいい。ぜひその一員になってもらいたい。 長谷部 健渋谷区長。1972年東京都渋谷区神宮前生まれ。株式会社博報堂を退職後、2003年1月、NPO法人green bird(グリーンバード)を設立し、原宿・表参道を中心にごみのポイ捨て対策プロモーション活動を開始。同年4月に渋谷区議会議員に初当選。以降、3期連続で当選。2015年渋谷区長に当選。現在に至る。 |インタビュー・文:増田隆幸|写真:小此木愛里|取材協力:水野公樹
CoinDesk Japan 編集部