『不適切にもほどがある!』CG加工された「喫煙シーン」…TVの現場に蔓延る過剰な自主規制の正体
コンプライアンス度外視で話題の『不適切にもほどがある!』。局内の制約と長年闘ってきたテレビ東京の元プロデューサーで、現在桜美林大学芸術文化学群教授の田淵俊彦氏によると、ドラマ等でのテレビ局の自主規制は「世界的には珍しく、極めて日本的」だという。 【衝撃写真】すごい…!仲里依紗が似合いすぎ「 網タイツ&ド派手レオタードのキラキラ大胆衣装」 ――― ◆世界的にも珍しく、極めて〝日本的な〟自主規制 次は「喫煙シーン」という「タブー」についての事例だ。この喫煙シーンに関しては、さすがの『不適切-』においても、バスの中や教室でのたばこの煙はすべてCGで書き足していた。現場で喫煙はおこなっていない。やはり加工は明らかにバレバレなので、制作陣もこれはやりたくなかっただろう。しかし、おそらく様々な障害や軋轢があったということは想像に難くない。 テレビ東京で私が最後にプロデューサーを務めたドラマ『弁護士ソドム』でも、喫煙に関する規制がおこなわれた。ドラマのなかで主役を演じる福士蒼汰氏が喫煙するシーンを撮りたいと監督が言い出した。すると、そのシーンを台本で読んだ局内のとあるセクションから「喫煙シーンは控えるように」とのお達しが来た。「控えたほうがよい」や「控えてほしい」ではなく、「控えるように」である。 近年、たばこのCMがテレビから消えたことは周知の通りだ。これは、たばこを専売する「日本たばこ産業」が’98年からテレビやラジオ、インターネットでのたばこのCMを自粛し始めたことに起因している。今回の『不適切-』は’86年設定なので、たばこをふかすシーンがバンバン出てくる。 だが、私が尾崎豊氏を自伝的に描いたドラマ『風の少年~尾崎豊 永遠の伝説~』をプロデュースしたおりにも、高校生の尾崎氏が道路に座ってたばこを吸うシーンに「待った」がかかった。 私は「道路にうずくまってたばこを吸いながら、ネコのような目線で世間を観ていないと尾崎じゃないだろう」とこのシーンの必要性を訴え何とか局からOKを取りつけた。しかし、このとき私は、コンプライアンス(このころはまだこの言葉は一般的ではなかった)に過敏になるあまりに今後は映像の必然性や作品の創造性が損なわれることになってゆくであろうとテレビの未来を憂いていた。 そして’24年のいま、たばこ関連のテレビCMは喫煙のマナーをアピールする「イメージ広告」に限られている。これはひとえに日本たばこ産業をはじめとするたばこ業界全体の「自主規制」から来ている。そしてスポンサーへの気遣いとして、テレビ局各社は番組内における喫煙シーンの自粛をおこなっている。それは世界的にも珍しく、極めて〝日本的な〟事象だと言える。