「エクストルーパーズ」発売12周年! カプコンの隠れた(隠れてほしくない)名作、斬新なマンガチック爽快アクション
カプコンより2012年11月22日にプレイステーション 3及びニンテンドー3DS用にて発売されたゲームソフト「エクストルーパーズ」が、本日発売12周年を迎えた。 【この記事に関する別の画像を見る】 本作は、危険な原住生物「エイクリッド」が生息し、敵対する勢力も存在する入植実験惑星EDN-3rdを舞台に、熱血主人公ブレンが巫女のティキや仲間達と出会い、惑星に迫る危機「スブリマトゥム」に立ち向かっていく、少年少女たちの物語を描くSF冒険活劇。 カプコンの人気シリーズ「ロストプラネット」と世界設定を共有する作品ではあるが、実質的な繋がりはなく、グラフィックもリアル寄りな「ロストプラネット」と比べて本作は「マンガチック爽快アクション」と謳われている通り、アニメ調の画風となっている。 本稿では、未だにカプコンに「エクストルーパーズ」のアニメ化とHD版発売、楽曲ライブを求める、重い愛を抱いた筆者による本作の振り返りをしていきたいと思う。 ■ 何はともあれキャラクターがみんな良い! 声優陣も豪華! 「エクストルーパーズ」と言えば、やはりキャラクターを抜きには語れないでしょ、ということで、まずはメインキャラクターたちの紹介をしていきたい。キャラクターデザインは「囚われのパルマ」などで有名なカプコンのデザイナー・実田千聖さんが務めている。 □ブレン(CV:梶裕貴さん) 「ギンギラ一番星を俺は目指す!」が口癖な本作の主人公で、EDN-2ndからNEVECのアカデミーに入隊するためにやってきた。いわゆる熱血人間で、好奇心旺盛、人見知りをしないなど、コミュ力の塊のような少年。一方であまりに変わった言動・行動が多く、変人呼ばわりをされたり怒られることも多いものの、老若男女問わず分け隔てなく接する。ただうるさいだけの少年ではなく、バトルに関しては天性の才能を持っている。 □ギンギラ(CV:子安武人さん) 次世代AIを搭載した、人型の試作バイタルスーツ(VS)。パイロットと話したりすることも可能な、高度な人工知能を持つ。当初はクーリスのVSとなる予定であったが、ハプニングによりブレンがパイロットとなり、以降はブレンの相棒として活躍する。ギンギラとは、登録時にブレンが命名。ブレンのことを「マスター」と呼び、熱血少年であるブレン同様、人工知能ながら熱い性格になっており、人間味がある。 □ティキ(CV:早見沙織さん) 本作のヒロインで、雪賊「貴森賊」の巫女。他の雪族やブレン達の言葉を話せる他、AKの意思を感じ取る能力を持っている。初対面のはずのブレンのことを何故か知っており、ブレンからは「いつもキラキラしているから」という理由で「キラキラちゃん」と呼ばれている。後にブレンらが所属するアカデミーに編入し、ブレンらと共に生活を送るようになる。 □クーリス(CV:谷山紀章さん) テックベース出身の上級訓練隊員。艦隊司令の息子という、いわゆるアカデミーのエリート。成績は常にトップで、ファンクラブが結成させるほどの人気者。プライドが高く、常に鍛錬を欠かさない。自身のVSとなる筈だったギンギラを奪われた事を皮切りに、ブレンに対して強い嫉妬心を抱くようになる。 □ジュリィ(CV:沢城みゆきさん) クーリス同様、テックベースから入った特別編入隊員。明るく、アイドルのような存在だが、こう見えてVSの操縦技術はクーリスを上回る。VSに対して豊富な知識と並外れた愛情を持っていて、ギンギラには飛び抜けた愛情を注いでいる。ブレンにも、当初はギンギラのメインパイロットということで興味を持つ。 □ルアン(CV:代永翼さん) ブレンよりも先に編入した先輩で、何かと世話を焼いてくれる少年。原住生物「エイクリッド」(AK)に強い興味を抱いており、データ収集をしている。ブレンからは「先輩君」と呼ばれているが、実際には先輩とは思えないほどびくびくオドオドした性格で、戦闘も苦手という、少々頼りない先輩だったものの、ブレンらと共に多くの試練を乗り越えて、たくましく成長していく。 と、メインキャラクターだけでも圧巻の声優陣が本作を彩るのだが、更にサブキャラクターでは、各ベースの情報を管理する運営AIシリーズのW.I.Z(CV:小林ゆうさん)や、アドバンスベースの教官であるウォルター(CV:三宅健太さん)、テックベースの教官であるリーガン(CV:三木眞一郎さん)、ブレンたちが所属する教育機関アカデミーの局長であるクライス(CV:大塚芳忠さん)などなど、メインキャラクター以外も豪華声優陣がそろっている。 そして本作では早見沙織さん、沢城みゆきさん、小林ゆうさんらがそれぞれボーカルを取る曲もあり、これがいずれもとってもキュートなのだ。(音楽については後述) 2年前の10周年時には、主人公の梶裕貴さんも、自身のXにて「子安さんとよく話すこの作品」と本作のことを紹介しており、梶さんと子安さんにとっても思い出深い作品になっているようで、両者の大ファンな筆者にとっては嬉しい限りである。実際、梶さんと子安さんが相棒役として共演したのは本作が初だった。 彼らの熱演は、公式PVからも感じ取れる。改めてPVを見て筆者も「本当にすごいゲームだったな……」としみじみ感じ入ったので、本作が大好きなファンはもちろんのこと、本作を知らない人もぜひ見てみてほしい。 未だにブレンとクーリス、ギンギラに深い愛を注ぐ筆者なのだが、他のキャラクターもみんな大好き、というくらいにキャラクター全員が可愛くて、カッコいい。これらのキャラクターを活かしたのが、代表作に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」や「エウレカセブン」などを持つ、脚本家の佐藤大氏だ。 実際、魅力的なキャラクターは、素晴らしいシナリオを得て、素晴らしいひとつの作品へと仕上がった。子安さんがギンギラという喋るロボットを演じるのも、ただ声優陣を豪華にしたいだけの作品ではないから、というのは終盤になってより一層感じるのだが、ここから先は物語上の大きなネタバレとなるので、伏せておきたい。 ■ マンガチックな表現が面白かった 前述のPVをご覧いただいてもわかると思うが、本作は「マンガチック」になっている。この独特な作風が、本作の最大の魅力なのである。 ジャンルとしては「マンガチック爽快アクション」と謳っており、ストーリーではマンガのコマ割りとゲームならではの演出が融合している「マンガデモ」が採用されている。マンガでもない、アニメでもない、ゲームとしては一風変わった映像演出は、とても斬新だった。キャラクターらがコマの中で暴れまわって、ムービーならではの迫力とマンガならではの軽快さを併せ持つ、テンポの良いイベントシーンとなっている。 マンガチックな表現はストーリーだけではない。バトルも、アクションが得意なカプコンらしい本格的なアクションバトルが楽しめつつ、演出はマンガチックになっている。 バトルのベースや登場する敵などは「ロストプラネット」に近いものとなっており、「ロストプラネット」に登場するバイタルスーツ(VS)やエイクリッド(AK)も多数登場。ただし「ロストプラネット」と違ってVSに自由に乗降はできず、特定のミッションでVS(ギンギラ)に乗って戦う。このVS戦も非常に楽しくできており、ブレンで戦う時とはまた違った操作感でのバトルを楽しむことができた。 シューティングアクションだが、弾数の概念はないため、とにかく撃って撃って撃ちまくれる。本作の作風からも戦闘難易度はそこまで高くなく、TPSをあまりプレイしたことがない人でも入りやすい難易度になっていた。かくいう筆者もTPSは割と苦手なほうで「ロストプラネット」はあまりプレイできなかったのだが、本作はクリア後のやり込みまで含めて、トロコンしている。 バトルが簡単なのかというと、決してそうではない。むしろTPSが下手な筆者は割とよく死んだ。ただ、初心者でも入りやすい敷居の低さにはなっており、爽快感もある。システムも取っつきやすく、筆者も本作をプレイして以降、以前よりもTPSに苦手意識がなくなった。もちろんシステムに左右される部分はあるのだが、TPS入門としては非常によくできている作品だ。 ■ 北川保昌氏による素晴らしい楽曲の数々 「エクストルーパーズ」を語る上で欠かせないのが、本作を彩る楽曲たち。本作の楽曲は「レイトン教授VS逆転裁判」や「大逆転裁判」、「囚われのパルマ」などのBGMを手掛けた北川保昌氏が担当している。 とはいえ、これらの作品では比較的オーケストラだったりヒーリングミュージックのような大人しめの音楽が多いが、「エクストルーパーズ」ではテクノ、トランス、EDMなどの明るいサウンドが、ゲームを彩っている。(なお、本作の楽曲を手掛けた北川氏は、「テクノではなく”ゲーム音楽”」と語っているが、それはもちろんそうなのである) 「The Shooting Star」は初めてブレンがギンギラに乗って出撃するシーンで流れる曲で、まさにブレンのテーマ。「ギンギラ一番星を俺は目指す!」のセリフにもぴったり合うノリのいい楽曲だ。 「Starry Conversation」の「Triangle mix」ではW.I.Z役の小林ゆうさんが、「Bunny mix」ではジュリィ役の沢城みゆきさんがボーカルを取り、雰囲気の異なる2バージョンでゲームを盛り上げてくれた。そして「解放レゾナンス」、「Re@union」ではティキ役の早見沙織さんが美しい歌声を披露してくれたのも、熱かった。 ……とくれば、前述の通り、「何故、女性陣の可愛いボーカル楽曲は充実しているのに、男性陣のボーカル楽曲がないのだ?」となるところで、こればかりは未だに少々根に持っている部分ではあるのだが、「エクストルーパーズ」の続編がもしも作られるようなことがあれば、ここはぜひぜひ、ぜひとも、北川氏と男性声優陣とのタッグをお願いしたい。 他にも全体的にファッショナブルな楽曲ばかりで、「通勤時に聞くとテンションがあがる」というような声も多い、本作のオリジナルサウンドトラック。楽曲はいずれも評価が高く、筆者も、クラブミュージック調のカッコいいサウンドでゲームをやりたければ「エクストルーパーズ」をやってほしい、と声を大にして言いたいところだ。 ちなみに本作のサウンドトラックは、一部がゲーム発売時期にあわせて発売されていたのだが、ファンからの熱量の高さで、ゲーム発売から3年後に全曲入りのオリジナル・サウンドトラックが配信で発売された。それほどまでに熱い支持を受けている楽曲の数々を、ぜひ聞いてみてほしい。また「ストリートファイター6」でも「エクストルーパーズ」の楽曲をBGMとして使用できる。 ■ 公式が熱い! 「エクストルーパーズ」は熱狂的なファンが多く、そして公式(カプコン)がそれに応えてくれている作品で、まさに公式とファンとが表裏一体となって盛り上げている作品だ。 北川氏も10年経ってなおアレンジ楽曲などを配信しているが、実田千聖氏によるイラストも数多く公開されている。例えば、カプコンから配信されていたソーシャルゲーム「オトレンジャー」と「エクストルーパーズ」がコラボした時は、実田氏描きおろしのイラストをカプコン公式アカウントがXに投稿してくれた。 また、「エクストルーパーズ」10周年記念時には10周年記念楽曲「STARRY MANGA MIX」をイーカプコンDigital Storeで配信した他、実田氏による新規描きおろしイラストも公開に。 現在カプコンを退職した、本作のプロデューサーである小嶋慎太郎氏の誕生日に、実田氏が「エクストルーパーズ」のキャラクターを描いたイラストを提供したこともある。 こうして公式が不定期に燃料を投下して盛り上げてくれるからこそ、続編、あるいはHDリマスター(その際はぜひ「強くてニューゲーム」的な2周目仕様を入れてほしい)、アニメ化などを望まずにはいられない。 本作のプレーヤーからは「隠れた名作」と呼ばれているが、筆者としては12年経った今でも「隠れてほしくない名作」である。カプコンにしては珍しい作風のタイトルだったが、アクションはさすがカプコン製といったところで、滑らかな動きでサクサク動き、「爽快」という言葉を完璧に実現している作品だ。 ハードがPS3と3DSのため現行機で遊べないのが本当に残念でならない。本作のファンも、これから遊んでみたい人も、「エクストルーパーズ」への応援を、声を大にして叫んでもらえれば幸いだ。 (C)CAPCOM
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