東京五輪へ女子レスリング世界選手権トリプル金メダルが意味するもの
吉田も伊調もいない日本女子だが、今回の結果から、後進が育っていること、2020年東京五輪に向けて好発進をしていることを証明したといえる。彼女たちの活躍は、女子チーム全体が強さの好循環にあるからだ、と栄和人・日本協会強化委員長はいう。 「日本女子の練習は、世界のどこよりも厳しい。だからといって、全然、嫌な雰囲気にならないんだよ。金メダリストや世界チャンピオンが率先して厳しい取り組みを実践し、後輩たちの練習で足りないところを指摘して、彼女たちだけで十分に追い込めているから、僕はよいところを見つけて褒めるだけ。充実しているからだろうね、本当にしんどい練習を続けているんだけれど、いつも最後にはみんな笑っている。自然に、強くなること、チャンピオンになることとはどういうことなのかが伝わる。吉田と伊調が長くトップで居続けたから、若手は育っているのかと不安視されることもあった。でも、今回、東京五輪を目指す新チームと考えて挑んだ世界選手権で、結果も、内容も満足がいくものを残せたと思う」 栄強化委員長が言うように、現役の金メダリストから伝えられる勝利の美しさは、何よりも後進の育成に役立つだろう。五輪での体験は何にも変えられない、世界選手権であがる表彰台の上もいいものだけれど、五輪はもっと素晴らしかった、「サイッコーでした!」(土性)、「本当にきれいだった」(川井)と金メダリストは話している。 「世界選手権の一番高い場所もすごくいいところだったけれど、五輪でみた表彰台からの景色は本当にきれいだった。あんなにきれいなところは、きっと五輪にしかないと思う。だから、2020年東京五輪でも、あのきれいな景色をもう一度、見たいと思っています」(川井) 夢を見ているようにうっとりと、五輪で見た光景について話す彼女の言葉は、どんな報償のニンジンよりも、日本の女子レスラーたちを強くする原動力となっているに違いない。 (文責・横森綾/フリーライター)