宇多田ヒカル「First Love」が古くならない理由。発売から25年、Netflixドラマを機に若者からも支持
英語と日本語の使いかたは“耳の良さ”ゆえ
そして歌詞に注目すると、これほどまでに英語詞の恥ずかしさがない曲も珍しいのではないでしょうか。<You are always gonna be the one>からシームレスに日本語へと流れる展開は、あまりにも自然で気づかないほどですが、相当な離れ業です。 そう言うと、“宇多田は帰国子女なんだから英語が上手で当たり前だ”という声が聞こえてきそうですが、もしそれだけだったら、もっと英語が悪目立ちしてしまうはずです。そうではなく、曲の姿形を崩さずに、異なる言語を美しく音楽に配置する能力は、耳の良さという他にありません。 耳の良さとは、つまるところ、ミュージシャンの命。言葉の中にあるリズムや抑揚を発見し、曲に活かすことのできる本質的な能力。 「First Love」は、宇多田ヒカルという“キャラ”ではなく、実直なソングライターが生んだ衝撃でした。だから、四半世紀を経てもなお新鮮に響くのです。 文/石黒隆之 【石黒隆之】 音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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