【小粒でピリリと辛い人参?】ロームに聞いた、半導体がEV進化のためにしてくれること
様々な形態で市場に提供。その理由とは
今後、トラクションインバータ向けの市場が大きくなっていくことを見越し、ロームではすでに生産拠点を整えている。また、第5世代のSiC MOSFETを2025年に市場投入するとともに、第6、第7世代の投入計画を当初から前倒しする計画だという。 なお、ロームは同社の半導体を、薄い板状の『ウエハ』と呼ばれる大元のものから『ベアチップ』、『ディスクリート』、『モジュール』といった様々な形態で提供する。SiCにおいてこれらの様々な形態で提供ができる企業は世界でも数社しかないという。 例えるならば、人参を畑ごとでも、生でも、皮をむいて下茹でした状態でも、そのままお皿に乗せられるようにグラッセでも販売できる、ということ。しかも、SiCの普及を推進するため、いわゆる同業他社にも販売しているという。この分野のリーディングカンパニーである矜持だろう。 さらに、メーカーが自社でこれらの人参を使って調理をする際には、 これまで積み上げてきたノウハウと独自技術であらゆるリクエストに応えてくれる。つまりグラッセにする際に、「うちはもっと歯ごたえを残して」とか「バターの風味を強く」みたいな相談に乗ってくれる上、「歯ごたえを残すなら、ゆで加減だけでなく面取りの角度を変えてみては」、「ただバターを増やすのではなく、下茹での際の塩の分量を」といった提案をしてくれるというわけだ。 そして、これらの提案をしてくれる営業やエンジニアによるサポート体制を世界各地の拠点に構築しているというから、グローバルで採用が加速している点にも納得だ。実際、フランスのTier 1であるヴァレオ社に対してもSiCモジュールを提供し、パワートレインを共同開発していくという。 今後、様々なメーカーが試行錯誤し、それぞれが目指すクルマ作りを実現するために、半導体の力で寄り添う存在、それが『ローム』。小さな小さな半導体がxEV、ひいては自動車業界の発展に寄与していることに、クルマの中身のそのまた中身を覗いてみて、気付かされた。
AUTOCAR JAPAN(執筆/編集)