「メード喫茶」か「メイド喫茶」か 『記者ハンドブック』第13版発売へ
言葉は変わる。『記者ハンドブック』は遅れてついてくる
今回の『記者ハンドブック』改訂では、字を少し大きくし、見やすいユニバーサルフォントにした。また、同訓異字のつかいわけがわかりやすいようにした。「取る」と「捕る」のちがいなどを、意味ごとにわかるようにしている。言葉を使いなれていない人にもわかるようにしている。「これまでの記者ハンドブックでは、生まれたころから電子辞書の人には使いにくかったのではないか」(成川さん)といった問題意識からだ。 「言葉は、変わります。『記者ハンドブック』は、それに遅れてついていきます」と成川さんはいう。例えば「メイド喫茶」は、以前は新聞では「メード喫茶」と表記していた。これについて疑問の声が、ネット上では多く上がっていた。新聞社によっては、すでに「メイド喫茶」と表記しているところもある。こういった言葉の動きに対して、定着したかどうかを見つつ、改訂版にのせるかどうかは編集上のポイントである。「世間や同業他社がメイドと書くなか、時流に逆らってメードするのは大変だった」と、13版からは「メード」ではなく「メイド」を採用する。 新しい『記者ハンドブック』を手にしようとする一般の人にむけて、成川さんはいう。「もし文章を誰かに読んでもらう時には、理解してもらえるかどうか、辞書を引かなければわからない文章になっていないか判断するときに参照してもらいたい。言葉を、『これでいいのか?』と思った時に使ってほしい」。
新聞の興味深い言葉の使い方
表記にはローカルルールもある。札幌に本社のある『北海道新聞』では、「トウモロコシ」のことを「トウキビ」と書くようにしている。また、砂糖の原料となる「テンサイ」のことを「ビート」と書いている。いずれも、地元でそう呼んでいるからである。 人名用漢字をどう使うか、ということについての基準が新聞にはある。「澤穂希」や「櫻井翔」のようなスポーツ選手や芸能人の場合は、旧字体を使うことも多い。しかし官僚などは、新字体で記す。総務事務次官を務めている父の櫻井俊は、新聞では「桜井俊」と記されている。 読売新聞の渡辺恒雄主筆は、正式には「渡邉恒雄」であり、著作にはこの漢字で名前を出している。しかし、読売新聞によると、紙面で主筆の名前が出るときは「渡辺恒雄」であり、読売新聞の漢字の使い方の基準に従っているのだという。
とくに最近、各新聞社が校閲部門を縮小し、ベテランの校閲記者が減少していている中で、『記者ハンドブック』の重要性は増している。普通の人でも、会社での文書作成など、文章を書くことは多い。そういった作業をするときに、どんな言葉を、どんな表記で書くか迷った時には、新聞社が出している用字用語集を参考にしてはいかがだろうか。 (ライター・小林拓矢)