民主派が圧勝 “失敗”した?中国政府 香港デモの今後は
香港の民主化を求める市民らのデモが長期化する中、香港の区議会選挙で民主派が圧勝しました。この選挙結果は民主派と政府側との対立にどのような影響を与えるのか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】北京政府への忖度も? 香港人の思いと建国70年記念日
「5項目の要求」の貫徹目指す民主派
11月24日に行われた香港の区議会選挙は、71.23%という歴代最高の投票率を記録する中で、民主派が全452議席中の85%にあたる385議席を獲得(香港ネットメディア「香港01」の報道。民主派には多数のグループがあり、数え方によってはさらに2~3議席増える)し、勝利しました。前回の2015年選挙の議席数から約3倍という大躍進でした。 一方、政府寄りの親中派の議席は、民主派と反比例して、4年前の65%から約13%に激減しました。 香港の大多数の住民は、過去半年間続いた抗議デモを支持したのです。 現在、デモ隊と警官隊との激しい衝突は収まっていますが、抗議デモは終息したのではなく、状況次第でいつでも再燃する可能性があるようです。 しかし香港情勢の今後の見通しは、大勝利を収めた民主派にとっても、また、香港政府及びその背後にある中国政府にとっても明確でなく、両者の対立は選挙前より一層激しくなるという見方もあります。 民主派が今後もいわゆる「5項目の要求」の貫徹を目指していくことは明らかです。そのうち、「逃亡犯条例改正案の撤回」はすでに香港政府が受け入れました。残る4つは、(1)デモの「暴動」認定の取り消し、(2)警察の暴力に関する独立調査委員会の設置、(3)拘束したデモ参加者の釈放、(4)民主的選挙の実現です。これらは性質上、デモの関係「(1)から(3)まで」と選挙制度関係「(4)」に分かれますが、両方とも香港政府だけではなく、中国政府にとっても困難な問題です。 デモ関係の「暴動」認定の取り消し、警察の暴力に関する独立調査委の設置、拘束されているデモ参加者の釈放については、香港政府と民主派は鋭く対立しており、香港政府側は、今回の選挙で民主派が大勝したからといって、デモの性格を変えること、警察を調査の対象にすること、罪を犯したものを釈放することなどあり得ないという立場でしょう。 一方、民主派としては、そもそも香港政府が住民の意思を尊重せず、不当な条例を施行しようとしたことが問題の原因であるという考えです。また警察が過度の暴力を振るい、デモ隊に銃撃し、死傷者まで出したことは看過できないという立場だと思われます。青年が至近距離から銃撃され倒れる様子はインターネット上にも投稿され、強いインパクトを与えました。 このような両者の対立が果たして解消されるのか、まだよく分かりません。双方が今後どのように話し合うかによることですが、仮に香港政府が形式的な法律論を盾に頑なな態度を取ったり、区議会は諮問機関に過ぎないという理由で行政への介入を拒んだりすると、対立はさらに激化するでしょう。