「おもてなし武将隊」は文化になるか/愛知
三英傑に前田利家、加藤清正、前田慶次という地元ゆかりの武将に加え、架空の家臣である陣笠隊という役回りの総勢10人。単に観光客の記念撮影に応じるだけでなく、刀や槍を振り回しながら物語を演じるエンターテインメント性を重視。イケメンとして粒ぞろいだったこともあってたちまち人気を博し、最初の1年で名古屋城の入場者数を1.2倍に押し上げ、27億円の経済効果を生み出したとされた。 名古屋の成功を受け、各地に「おもてなし」を打ち出した武将隊が誕生。イケメン集団だけでなく、男女混成や女性だけの「あいち戦国姫隊」、幕末志士らの「土佐おもてなし勤王党」などバリエーションも増えてきた。「SAMURAIサミット」や「武将サミット」などの合同イベントも行われるようになり、昨年から「天下分け目の決戦」を開くに至ったのだ。 ■歴女、AKB、ヤンキー文化など底流 この盛り上がりは各隊の企画戦略やメンバー個々の努力はもちろん、いくつかのブームが底流にあると見るべきだろう。硬派な面では「歴女」と呼ばれる歴史好きの女性の存在。これは大河ドラマでのイケメン俳優起用、「戦国BASARA」を代表とする歴史ゲームのヒットも伏線としてある。 史実を踏まえながらもイケメンやコスプレという要素で創造するファンタジーの世界。マイナーな武将や影武者なども含めて「キャラを立てる」意外性。 今回の天下一決定戦でも「単なる演技だけでなく、武将を下支えした人物にも光を当てる仕掛けがされていた」と審査員として評したのは、現在放映中の大河ドラマ「軍師官兵衛」の歴史考証も担当する歴史学者、小和田哲男氏だ。 エンタメ的な側面では「AKB48」で確立された、大人数のアイドルを「育てる」仕掛け。名古屋の武将隊も初めは演技や舞台の素人ばかり。猛特訓や場数をこなして徐々に「芸」を身につけていった。そうした成長を観光地という「会いに行ける」場所でファンが支えている。 もう一つは、いわゆる「ヤンキー文化」だ。あえて紋切り型に提示すると、昨今言われるヤンキーのキーワードは「地元愛」や「友情」「様式美」など。それらの要素を各武将隊はすべて取り込んでいる。